研究概要 |
外科治療を受ける大腸癌患者に簡便な心理療法を行うことにより、大腸癌患者のQOLが向上し、免疫機能が改善するとともに予後が改善する、という仮説検証を目的とする。さらに、大腸癌患者の心理特性が予後に及ぼす効果も検討し、psycho-oncologyにおける看護の役割について考察する。 平成14年度は、平成12年度より引き続き患者を選定し、研究例(心理介入群30例、対照群30例)を目標に、次の要領で研究を進めた。 1.対象:大腸癌患者;心理療法群8例(男性3名、女性5名、平均年齢59.7±7.3歳、対照群6例男性3名、女性3名、平均年齢72.3±8.99歳) 2.方法:randomized controlled trial。 【倫理的な配慮】東北大学医学部倫理委員会の承認を得、研究を開始した。 インフォームドコンセントの後、(1)質問紙調査(2)心理療法(看護介入)(3)採血を行った。 1)質問紙の内容:生活習慣、SIRI33-J(日本語短縮版簡易対人関係反応尺度)、SF-36(QOL指標)、STAI、HO(Duke-hostility scale)、BDI、GSRS、MMPI 2)生理データ:CBC、TP、CRP、IL-6、IL-1b、cortisol、NKCA。(術前、手術2週間後、4か月後、1年後) 3)心理療法(看護介入)(患者1人につき、術前2-3回、術後3回)(織井) ◎術前面接:心理療法群のみ「Writing」を行う。3日間、連日20分間、「強い衝撃を受けたこと」、「辛かったこと」、「今までで心に残っていること」を記録用紙に書いてもらい、その後面接を行う。対照群はライフスタイルを記載することとし、第1日目は1日の日常生活スケジュール、第2日目は週間生活スケジュール、第3日目は食生活を記入させた。対照群との面接は非受容的とし、ライフスタイルの助言に止める。 ◎術後面接:手術2週間後、4か月後、1年後に質問紙の回答を求める。(面接法) 3.結果 NK活性の変化:術前術後の変化を介入群8例と対照群6例で比較した。対照群では、術前より術後のNK活性が低下していたが有意差はみられなかった。一方、介入群では、術前より術後のNK活性が上昇し、6ヵ月後及び1年後の有意差が認められた(P<0.05,Wilcoxonの検定)。 性格傾向と再現性:SIRI33-Jを用い、パーソナリティタイプを特定し術前、術後4ヶ月後、1年後の再現性を検討した。その結果、対象者13名中8名は癌に罹患しやすいパーソナリティタイプを示し再現性も認められている。
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