研究概要 |
本研究では,下肢関節を対象として,二関節筋の影響を包含して評価できる関節可動域の幾何学的表記法を用いて,10代〜70代の年齢域における関節可動域を計測し,その加齢変化を検討した。合わせて,足関節角度変化に対応した立位姿勢制御様式の加齢変化を検討するために斜面台を用いた計測を行った。Kuno(1998)らの測定法に従い,次の6種類の肢位における股関節・膝関節角度の測定を行った:1.股・膝関節最大屈曲(1-1)2.股関節最大屈曲・膝関節伸展(1-2)3.膝関節最大伸展・股関節屈曲(1-3)4.股・膝関節最大伸展(2-1)5.股関節最大伸展・膝関節屈曲(2-2)6.膝関節最大屈曲・股関節伸展(2-3)。最大膝関節屈曲角は166.1±2.2°から169.8±3.1°の範囲にあり,加齢の影響は統計的に有意ではなかった。最大膝関節伸展は-0.9±2.4°から-4.6±3.5°の範囲にあり,同じく加齢変化は有意でなかった。股関節屈曲角は10代の142.8°から70代の128.6°へ加齢に伴い統計的に有意に減少し(p<0.001),直線回帰による変化率は0.19°/年であった。股関節伸展角度も10代の-35.0°から70代の-12.8°へ加齢に伴い可動域が減少し(p<0.001),変化率は0.29°/年であった。可動域の加齢変化はどの関節,運動方向にも同等に起きるのではなく,股関節周りと二関節筋に現れ易いことが確認された。これは股関節は腰椎や骨盤の動きによる代償作用があるため、日常生活で伸張される機会が少なく、また二関節筋も隣接する関節の一方の角度を固定して特殊なストレッチ運動をしない限り伸張されないことに起因すると考えられる。立位姿勢制御様式の加齢変化については現在資料を整理中である。
|