滋賀県の希望が丘文化公園周辺を事例に調査・検討を行なった。まず、当地の人々のイノシシ認識について、アンケート調査と聞き取り調査を中心に、検討を行なった。その結果、イノシシ被害地では'害獣'イメージが強く、その他の地域ではボタン鍋に代表される'イノシシ肉'やイノシシの性質的特徴と思われている'猪突猛進'のイメージが強かった。この原因は、農作物への被害とイノシシ肉の利用といった人間とのかかわりが突出していることと、それ以外のイノシシの情報であるイノシシの行動や生態の情報が極めて少ないことによると考えられた。その結果、当地のイノシシの生態や行動に関する情報の入手とそれを住民に提供する必要性が指摘できた。 イノシシの行動・生態調査をテレメトリー法と胃の内容物検査を通して行なった。その結果、当地のイノシシの雌は1〜5平方キロ、雄は3〜9平方キロの行動圏をもっていた。これらについては、今後さらに調査の個体数を増やして検討を行なう必要があり、それによってさらに詳しいデータが入手できると考える。また、この調査では当地の放置された竹林や放棄された耕地がイノシシの主要な生息地になっていることも判明してきた。胃の内容物からも竹の根、籾などが検出された。 統計資料や聞き取り調査などにより、当地で竹林の利用集約度が低下していること、耕作放棄地が増加していることが明らかであり、これらの土地利用とイノシシの分布拡大、被害の発生の関係が浮き彫りになった。
|