(1)イノシシのテレメトリー調査を継統的に実施しているが、これまでの結果、成獣のメスが約2〜30km^2、オスがその2〜3倍の広さを行動圏にしている様子がうかがえた。 (2)これらのイノシシの行動圏には、アカマツの二次林、雑木林、竹林、放棄田などがみれられ、昼間は主にイノシシはこのような場所で食料を摂取したり、休息・.睡眠しているようである。そして夜間、人通りや照明などが消えるころから、民家近くや耕作地周辺に出没する傾向がみられた。 (3)春先にはタケノコなどを目的に竹林に接近し、初夏ころからイネなどの耕作地周辺の山間部を移動しながら食料をもとめるようである。食料がある間は、比較的長くその場にとどまり、食料がなくなったり危険を察知した場合などに、他所の食料の得られるところに移動するようである。 (4)高度経済成長期のころから、イノシシの生息適地となる耕作放棄地が増え、さらに人びとの竹林や里山の利用集約度が低下したことは、イノシシの耕作地周辺への接近を容易にし、イノシシの被害問題を顕在化させているようである。 (5)このような状況を地域の人びとや県や市町村の鳥獣担当者に理解してもらい、イノシシとの共生について新たなシステムを構築していく必要がある。そのため、地域の人びとに個人的・グループ的にこの点の啓蒙活動を展開し、さらには、平成14年2月21日に琵琶湖博物館で開催された滋賀県下の市町村や県の関係機関の獣害対策担当者・農業団体・農業者などを対象とした滋賀県主催の「野生獣農林業被害防止対策研修会」の講師を依頼された機会を通じて、このような職員・団体・個人にもイノシシとの共生にむけた講義・講演を行なった。
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