今年度もイノシシのテレメトリー調査を継続した。その結果、5月頃から11月頃まで、イノシシが里の耕作地周辺に居着く傾向が抽出された。米の生産調整や農業の兼業化などで耕作放棄地が増加していること、手入れ不足で周辺の竹薮などが荒れて拡大していることなどにより、イノシシがこれらを生息地としているためである。栽培されるイネは、多くがキヌヒカリという品種で、7月下旬に乳熟期をむかえ、9月上旬に収穫される。イノシシはこの期間に主に水田に侵入するが、その前後の期間も水田の周辺にいることがわかった。耕作地の周辺で捕獲したイノシシに、今年の春から初夏にかけて生まれたと思われる子イノシシが多かったことから、イノシシが里の耕作放棄地などで出産している様子がうかがえた。 イノシシの捕獲作業を地域の人びとと共に行い、またテレメトリー調査の結果などを地区の集会所で説明することにより、地域の人びとのイノシシ理解をすすめることができた。特に、土地利用の変化がイノシシの分布域の変動とそれに伴う被害の発生をもたらしている点を理解してもらい、イノシシとの共生をはかるには地域づくりが重要となることを示した。
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