研究概要 |
本研究は幼児の育児環境およびその生体影響を簡便でより客観性の高く検索する方法として非侵襲的および幼児に影響の少ない方法で採取できる尿や毛髪,爪等の生体試料の有用性を検証することを目的としている。 前年に引続き幼稚園児を対象に都市と農村部と生活環境を異にすることと各種バイオマーカーの変動について検討を行なった。調査は幼稚園および園児の保護者の協力を得て行なった。都市部は仙台市内の幼稚園の74名(男児40名,女児34名),農村部は宮城県鹿島台町の3幼稚園64名(男児31名,女児34名)。調査はスポット尿の採取と陰膳・実測法による丸一日の食事調査および質問紙による生活状況調査を行なった。。測定項目は,(1)スポット尿は尿量,クレアチニン濃度,尿比重,尿中17-OS濃度,尿中Cl,Zn,Cu等の微量元素,(2)食事調査は栄養摂取量と微量元素摂取量等である。尿中17-OSは臨床検査用キット(OSKIT,関東化学)を用い,尿中Clはクロライドカウンターを用いて測定し,他の微量元素類は湿式灰化処理後,ICP-MSやMIP-MS等で測定する。園児の身体計測値は定期検診値によった。 1)都市部の幼稚園児45名の登園時と降園時の尿中17-OS値(mg/g creatine,平均値±標準偏差)は1.25±0.58と1.17±0.71であり,尿中Cl値(g/g creatine)は9.4±3.9と8.6±4.0でいずれも個人差が大である。 2)食事からのCl摂取量(g/day,平均値±標準偏差)の都市部と農村部の成績は3.1±1.1と3.3±0.9で,農村部が大である。また尿中Cl値(g/g creatine)の都市部と農村部の成績は5.0±1.7と8.9±5.3となりいずれも個人差は大であるが,とくに地域的に都市部に比して農村部は高値である。 4)バイオマーカとしての尿中代謝物および微量元素の特異性を検討すべく幼稚園児の栄養および生活状況との関係について検討を行った。
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