言葉というのはそれを使用する民族や集団の歴史や風土、そして文化にねざしたものである。ある集団がある食品に対して特有の嗜好を持ち、また独特の食感表現法が存在する可能性がある。そこで、食感表現語の収集・整理のために、代表的な食品に対する「おいしさ」「まずさ」を表す食感表現語そして個々の食品を特徴づける食感要素の調査を行い、物理的な食感(特にテクスチャー)がその嗜好性を左右すると考えられる食品として小麦粉ベークド製品、米飯、麺、餅が取り上げられることを明らかにし、米飯、麺、餅についてこれら食品の物理的食感を適切に表しうる評価法を検討した。その結果、1)米飯は押し寿司様の飯粒団塊測定には問題があり、1粒での測定を繰り返し、その平均値を用いる必要があること、2)従来の一軸圧縮による大変形測定においても、圧縮面積を算出し、応力換算を行うことにより、基本的なレオロジーパラメータを得ることができること、3)圧縮大変形においても変形速度依存性を示し、粘弾性体として捉えた基本的測定が重要であること、4)それゆえ微小変形下での周波数依存性測定が必要で、さらに緩和スペクトルをとることにより、食感に対応した微妙な品種の差を客観的に識別できることを明らかにした。また、麺は茄で時間を変えた測定が必要で、餅の食感は圧縮よりも引張り測定が適していることが判明した。 さらに、被験者の食感の判定力の妥当性を探るため、物理量の単位・次元把握力を調査し、粘度の単位あるいはその「大きさ」の把握力は極めて低いこと、しかし実際に物質を相対比較するあるいは基準を2つ与えてマグニチュードを判定するという場合には、妥当な解が得られることを明らかにした。
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