研究課題
古代東アジアの銅鏡の鏡面はその大部分が凸である。鏡面が凸である理由は、従来諸説はあっても、その多くは仮説に過ぎず、また立証もされてこなかった。今回の研究では、凸面鏡の形成理由を銅鏡の製作技術の一つである熱処理(焼き入れ)と関連付けて考えた。つまり、銅鏡の製作技術に熱処理が用いられているという指摘は、近年になってなされたが、この作業仮説を模造鏡を用いた熱処理実験により検討し、実際の銅鏡と同様のきれいな凸面鏡を復元製作する。熱処理実験で得た模造鏡資料と実際の銅鏡資料を破壊分析し、工学的調査を行って銅鏡と熱処理との関係の理論的裏付け、出土鏡の曲率調査なども目的とした。今年度は2回の熱処理実験をおこなった。1回目の実験では、塩水の冷却水、均一な加熱を可能にする大型の加熱炉によりほぼ実物と差のない面反りを作りあげることができた。ところが2回目の加熱炉は模造鏡の面数が少なかったことから、各種の温度設定ができず面反り製作には失敗した。失敗した原因としては温度の問題が大きく、金属の状態がもっとも安定しないぎりぎりの低い温度(約600℃)で行っているためである。14年度についてはさらに低い温度、高い温度と各種のサンプルで行い、実物の古鏡と変わらない面反りを製作できるものと判断している。模造鏡と古鏡の金相断面の比較研究についても進展しており、熱処理が施された金相断面か、熱処理が施されていない金相断面か判断できるまでになっている。曲率調査についても主に中国山東省の出土鏡を500面ほど記録しており、実際の古鏡の面反りとどのように形態が異なるか比較する資料を揃えている。
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