研究概要 |
平成12年度は、次の問い1及び2の解決に取り組んだ:問い1:「数学の論証は,民主的な資質を育成できるか」/問い2:「現行の論証指導は,生徒の民主的な資質を育成できているか」。 問い1の解決のために、数学の論証と民主的資質との関係について、主に文献研究によって先行研究の知見を整理した。その結果、数学史の視点及び数学教育の視点から次の点が特定された。まず、数学史の視点については、論証の歴史的な発展の起点であるギリシャ文明において、ポリスの民主的資質がギリシャ数学の論証文化の醸成の源であり、論証と民主的資質とは歴史的に不可分であることが特定された。次に、数学教育の視点については、数学での相対的真理観に基づいてH.P.Fawcettの論証指導研究(1938)が先駆的に展開されていることが特定された。特に、この研究では、論証指導による数学以外の場面における批判的思考への転移が考察されており、民主的な資質にかかわる事例では論証指導の有効性が実証さえていた。つまり、「数学の論証は,民主的な資質を育成できる」ことが特定された。 問い2の解決のために、中学2年の論証指導以前に,クラス全員に対して民主的資質に関する質問紙調査を行い,その結果に基づいて5名を選び,より詳細な事項に関してインタビュー調査を行った。そして、中学2年の論証指導全てを3台のカメラで記録し、一連の論証指導が全て終了した後,指導前と同様に,質問紙調査と,同じ5名に対してインタビュー調査を行った。調査方法に改善の余地が有り,次年度再度調査等を実施する予定である。
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