研究概要 |
平成13年度における本研究の研究実績は,次の通りであった。 1.文献・資料の収集とそのデータベース化 昨年に引き続き,科学的な知識マネジメントについて,科学教育,認知科学や経営学等の関連分野における著書,論文及び資料の収集と検討を行い,データベースに追加登録し,Web上に公開できるような準備をした。 2.評価法に関する実証実験(1) 昨年度の理論的な検討によって,科学的な知識マネジメント能力を評価するために有効な枠組みとして認められた野中(1997)のナレッジ・マネジメント理論に基づいて評価枠組みを考案した。この評価枠組みは,科学的な知識マネジメントをその行為の中で判断できるようにチェックリスト形式に定式化した。それらは,知識の共同化,表出化,連結化,内面化といった知識変換プロセスに着目するものであった。開発された評価枠組みを検討するために,複数の学習者が再構成型コンセプトマップ協調作成ソフトウェアを学習の道具として利用している実験的(人為的)な相互行為場面を素材にして,実証実験を行った。その結果,開発された評価枠組みは,共同化,表出化,連結化については,有効性があることがわかった。しかしながら,内面化については改善の余地が認められた。内面化については,行為の中では可視化できないことが理由であった。 3.評価法に関する実証実験(2) 2.に続き,理科の教師が授業を協同で構想する場面を素材にして,評価枠組みの実証実験を行った。これは,実験(1)が実験室的な状況であったので,より現実の文脈としての科学的な知的行為を対象とした検討をするためであった。この実験においても,実験(1)と同様に,共同化,表出化,連結化については,有効性があることがわかったが,内面化については課題が残った。また,分析の結果として,教師の科学的な知識マネジメントのリアルな実態を記述することができた。
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