研究概要 |
実践的力量の形成は,授業者個々が当該の授業実践を振り返り,そこでの授業事象の認知と,授業実践の技術を,メンターを媒介に対象化する過程が重要であることが分かっている。しかし、研究者の実践知が授業者の実践知と融合するときに研究者はメンターとして働くが,その要因や機能は十分に解明されてはいない。この研究では,オンラインカンファレンスシステムを用いて,教師の授業事象の認知と授業技術の適応を掌る実践知を,授業者とメンターとしての研究者自らが対象化することを通して,明らかにすることを目的とする。システム構成としては、学部と附属の間で「遠隔操作によるカンファレンスシステム」を構築した。大学でビデオカメラを遠隔操作できるもので、これにより、双方向でのカンファレンスを可能にする。本システムを用いて、附属での授業進行に伴うオンゴーイングでの自己の授業認知を,授業者と研究者が同時並行で記録・分析して,授業者と研究者の実践知を対象化した。これにより、授業者は、子ども理解、授業展開、授業内容に関する実践知を働かせ、研究者は、授業構成、授業過程、授業内容に関する実践知を働かせていることが分かった。授業後のカンファレンスでは、研究者による「授業過程」での実践知をコアに、授業者との対話をすすめることに焦点が置かれ、授業者は、これを通して、自分の授業観、子供観、教材観へのリフレクションがなされることが推測された。附属校との間は10キロメートル離れているため、映像情報を1時間以上使用すると他の利用者への影響がでるが、幹線がより太くなればこの問題は解消される。
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