本研究は、授業者が観察者やメンターとしての指導者とのカンファレンス的交流により、実践的力量の形成過程を明らかにすることを目的としている。しかし、授業研究における、メンターとしての研究者や指導者の役割は、明示的であるわけではなく、それが特徴であり課題でもある。本研究では、小学校と中学校の授業を数時間単位でとりあげ、授業者とそれへの参与者とが、(1)授業過程での各自の認知を記録する。(2)授業後にメンターとして授業者と対話し記録する。(3)その後(1)の過程を各自で振り返り自己の「みえた事象」を記述し、(4)メンターとしての機能を、(2)及び(3)をデータとしながら分析し、オンラインカンファレンスの基礎的知見を得ることとした。その結果、メンターは、カンファレンスの過程で、(1)授業者の意識に寄り添い、授業者の振り返りを促す働きをしていること、(2)授業者の発話を、第三者としてとらえ解釈して、授業者に問い返すことで、発話の意味を意識化させていること、(3)授業の構造全体への問い返しをするなかで、文脈的に授業の構造をみる視点を意識化させていること、などが、カンファレンスの機能として明らかになった。さらに、研究者と授業者の同僚としての参加者とのメンター的機能は前者が内容知、後者が方法知に特徴的であることが、ある程度把握できた。研究者にとっての授業実践知の把握は、オンラインカンファレンスの柔軟な活用により、現実的に可能であることが示唆された。
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