研究概要 |
認知科学や心理学等の研究分野における探求過程として,仮説に基づき実験を計画し,実験結果のフィードバックを受けて仮説を修正し,再実験を計画,実行するというプロセスが重要である。本研究では,筆者らが開発した認知シミュレータを用いて仮想心理実験環境を構築し,上記のような仮説検証スタイルを学習するための計算機環境を構築する。 平成12年度は,まず,学習システムの構築を行ない,さらに実際に被験者に本システムを使用させ,その基本的な学習過程を検討した。 本シミュレータが扱う課題は,問題解決の領域で古くから扱われてきた発見課題としてのWasonの2-4-6課題である。シミュレータは,Wason課題を協同して解決する二人の被験者をシミュレートし,具体的には,本課題を解決する計算機モデルが,協同してターゲットを発見する。 本シミュレータは,すでに得られている関数でパフォーマンスを疑似計算し,そこに適当にノイズを加えて出力するといった嘘のメカニズムを用いるのではなく,当該の人間の問題解決の過程を実際にシミュレートした結果を,そのプロセスとともに出力する。 また,本シミュレータでは,様々な実験要因の組み合わせによるシミュレーションを実行可能にしている。具体的には,6要因を操作可能にし,合計2億条件(=35×5^2×4^2×5^2×5^2×5^2)の実験条件の組み合わせを提供する。このことにより,学習者に対して十分複雑な環境を提供することが可能となった。学習者は,このシミュレータを使って,モデルのパフォーマンスを規定する要因を同定することが求められた。 本年度は,本シミュレータを実際に用いた予備的実験を行ない,システムの動作確認,およびそこで観察された被験者の基本的な学習過程を検討した。
|