研究概要 |
コプレズンスを伴う対面コミュニケーション状況における共同思考の観察から,聞き手のあいづちが話し手の発想に大きな影響を及ぼすのではないかとの着想を得た。そこで,聞き手のあいづち頻度を独立変数とし,話し手の発想量,意欲,満足度を従属変数とする実験を行った。あいづち頻度の効果が課題の影響を受ける可能性があることを想定し,要因計画はあいづち頻度(高/低)×課題(予想/解決)の2要因計画を用いた。予想課題としては「日本社会の高齢化がさらに進むと,どんなことが起こるか」を,解決課題としては「日本のゴミ問題を解決するには,どうすればよいか」を設定した。 被験者は大学生女子24名であり,彼らは12名ずつ,あいづち高頻度群とあいづち低頻度群に分かれた.各群6ペアを構成し,ペアの一方は話し手,他方は聞き手の役割を終始担うようにした.役割を決定した後,それぞれの役割について説明した.話し手の役割は,各課題について,聞き手に5分間考え(アイデア)を述べることである.その際,できるだけ多くのアイデアを出し,聞き手に発言を求めないことや聞き手に質問をしないことが求められた.一方,聞き手は,高頻度であいづちを打つあいづち高頻度群と,なるべく打たない低頻度群に分かれた. 実験結果は,次の通りである:1)アイデア産出量については,あいづち高頻度群が低頻度群より高い成績を示したが,あいづち頻度と課題との間に交互作用が認められ,予想課題においてより顕著にあいづち頻度の効果が現れた.2)話し手の意欲,満足度ついては交互作用は認められず,両課題においてあいづち高頻度群が低頻度群より高かった.ここから,発想におけるあいづち頻度の効果は,アイデア産出量という認知的な側面と,意欲,満足度といった感情的な側面とで異なることが示唆された.
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