本研究は、保健・教育指標が高いインド・ケララ州を取り上げ、援助の受け入れ形態の違いにより障害児教育の実態にどのような特徴が見られるのか、スリ・ランカの現状との比較・検討を通して解明することを目的とする。 科学研究費の交付期間内に以下の3点を明らかにすることを目標としている。 (1)ケララ州における障害児教育の歴史・制度・実際について、現地での資料収集と教育機関訪問により明らかにする。(2)ケララ州における障害児教育分野に対する外国からの援助の実態を明らかにする。(3)ケララ州とスリ・ランカの比較・検討を通して、外国の援助受け入れ形態の違いが障害児教育の実態に影響を与えることを論証する。 上記の課題を達成するために、本年度は現地調査及び文献収集を実施した。ここでそれぞれについて、本年度の成果をまとめる。 (1)現地調査 8月16日〜9月6日までインド・ケララ州及びスリ・ランカに滞在した。ケララ州では、州立聾学校及びNGOが運営する聾学校、肢体不自由児施設、知的障害者教育施設を訪問し、それぞれの訪問先で関係者との面談を実施した。その結果、ケララ州の障害児教育は州立学校だけでなく、国内NGOにより活発に運営されていること、海外からの援助は直接的に目に見えるレベルでは実施されていないが教員研修等において間接的に支援を受けていることがわかった。また、スリ・ランカについては、これまで十分な検討が行われていなかった教員養成についてさらに調査を進め、その成果を熊本大学教育学部紀要に公開した。 (2)文献収集 ケララ州の経済、社会及び社会運動については、欧文・和文ともに多くの文献が見られるので、できる限り入手した。障害児教育の基盤である社会・文化的背景について理解するよう努めた。 来年度は、現地調査をさらに進め、南アジア諸国における障害児教育の実態を解明するために、援助との関わりでの分析・検討を行いたい。
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