本研究の目的は、保健・教育指標が高いインド・ケララ州を取り上げ、援助の受け入れ形熊の違いにより障害児教育の実態にどのような特徴が見られるのか、同様の保健・教育指標を示すスリ・ランカの現状との比較・検討を通して解明することであった。具体的には、科学研究費の交付期問内に以下の3点を明らかにすることを目標とした。 (1)ケララ州における障害児教育の歴史・制度・実際について明らかにする。 (2)ケララ州における障害児教育分野に対する外国からの援助の実態を明らかにする。 (3)ケララ州とスリ・ランカの比較・検討を通して、外国の援助受け入れ形態の違いが障害児教育の実態に影響を与えることを論証する。 上記の課題を達成するために、2回の現地調査及び文献収集を行った。以下では、上の3点について明らかになったことを要約する. (1)ケララ州では盲・聾・知的障害学校が社会正義とエンパワメント省の管轄下で、国内NGOによって活発に運営されているが、州政府運営の学校もあること、一方、州政府は人的資源省の方針で統合教育を進めている. (2)ケララ州では海外からの援助は直接的には受け入れていないが、宗教機関等を通じて盲・聾・知的障害学校の教員研修等において問接的に支援を受けている. (3)スリ・ランカでは、1)国外及び国内NGOが運営し教育省が関与しない盲・聾・養護学校、2)1980年代よりスウェーデン政府等の強力な支援で進められた教育省管轄の公立学校における統合教育という、障害児教育の二極分離が見られる.大学での専門家養成が確立しておらずその基盤が脆弱なため援助に依存しがちであることがスリ・ランカの特徴である.一方高学歴の自国専門家をもち外国の援助を直接求める必要はないが、さまざまな理由で政府の統合教育が十合機能せず、国内NGOが障害児教育を担うのがケララ州の特徴であることが明らかになった.
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