研究課題/領域番号 |
12878050
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
久保 泉 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70022621)
|
研究分担者 |
鈴木 孝至 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 助教授 (00192617)
伊澤 義雄 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 教授 (10006265)
山西 正道 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 教授 (30081441)
奥園 透 広島大学, 大学院・理学研究科, 講師 (10314725)
高橋 徹 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 助教授 (50253050)
|
キーワード | 量子計算 / 認知情報処理 / 励起子 / 光子 / ラビ振動 / ユニタリー変換 / 位相制御 |
研究概要 |
量子原理に基づく情報処理の研究を進めるにあたり、我々は二つの側面から研究を進めてきた。一つは情報処理に必要な処理系の数理モデルであり、もう一つは物理系と素子を想定しての基本的な素子動作の研究である。昨年度は数理モデルでの成果が主であったが、今年度は特に後者についてさまざまな成果が得られたので、今回はこの素子動作研究について報告する。 想定した物理系は、微小共振器中での励起子と光子との相互作用の系であり、これは通常用いられている二準位系のモデルに帰着することができる。この系の特徴は、一つは微小半導体系であるため素子としての拡張性にすぐれていること、二つめは電場を印加することによってラビ振動のスイッチングの可能性が期待できること、さらに光による制御素子であることの3つである。さらに光子と励起子との相互作用にともなうラビ振動はすでに観測されており、この系が全く非現実的であるというわけではない。以上のことからこの系に着目し、量子計算素子の可能性を調べるために、二準位系モデルを用いて数値計算を行うことで、素子の基本的動作について調べた。 数値計算の結果、一素子については、ラビ振動のスイッチング動作と時間による位相操作によって任意のユニタリー変換を構築できることがわかった。これは光を用いた素子という観点からみると非常に大きな成果だと言える。現状で調べられている光制御による素子は、位相変化が光の振動数と同程度の速さで変化するため、現在の制御技術では位相変化が速すぎて操作が非常に困難だからである。二素子に関しては、二素子がお互い励起子状態である場合にかぎりなんらかの相互作用があると考え、第一近似として双極子双極子相互作用を想定して、二準位モデルに組み込んだ。その結果、基本的なCNOT動作をすることがわかった。さらにデモンストレーションとして、グローバーの検索アルゴリズムを実行させ、基本的な動作を確認することもできた。このように素子の基本動作と制御を明らかにしたことは、これらの動作や操作を認知処理系に組み込んだ具体的な処理系のモデルを構築するにあたって、最初の足がかりとなるものである。
|