研究概要 |
量子状態の重ね合わせによる並列計算装置(量子コンピュータ)が理論的上考えられ,従来型のコンピュータでは膨大な計算時間を必要とする問題が,高速に解決し得る.この量子計算の主たるアルゴリズムとして,現在までに,Shorの素因数分解(1994年)と,Groverのデータベース検索(1996年)の2つが提案されている.平成12年度において本研究では,ShorやGroverらが示したアルゴリズム形態以外の,参考となり得る手法調査と資料収収集を行った.その結果,本研究のような目的を持っている研究は,かなり独自であることが分かった. 本研究では,量子計算機構により,類似画像を認識するためのアルゴリズムを追究している.通常,画像認職においては,前もって登録された画像(登録画像)と入力画像との類似度計算(マッチング)を行い,その最大類似度を与える登録画像として入力画像を認識する.量子コンピュータを利用すると,入力画像を少ない画素数(log2N)で表現可能であるのみならず,認識のためのマッチングにおいて,量子状態での並列計算性を利用すれば,登録画像数に殆ど依存しない高速性を得る.平成13年度では,標準パターンを含む部分空間の正規直交基底から,観測量と対応するエルミート作用素の固有ベクトルから成る正規直交基底への対応付けを行うところの,ユニタリー変換を検討し,相関性のある画像パターン間の識別のための正規直交基底を如何に取るかを,実験的に検討した.その結果,量子通信において評価の高い,SRM(Square Root Measurement)法の適用が画像パターン認職においても有効であることが分かった.更に,古典的物理の領域ではあるが,上述の数学的ユニタリ変換そのものは光の空間変調と,液晶における配向分極による偏光現象との応用により実現できることも分かった.
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