研究概要 |
互いに通信しながら自律的に動作するプロセスの集合を分散システムと呼ぶ.プロセスは計算機が実行中の逐次プログラムをモデル化したものである.分散システムの定義を少し拡張し,プロセスを(自律的な)計算主体と置き換えるならば,分散ロボットシステムや,交通システム,あるいは(人間)社会システムなど,異なる様々な分野に属するシステムもまた分散システムの範疇に入る. 分散システムがシステムとして機能するためには,互いに競合する複数の計算主体が自律的にその利害を調整し,協調する仕組を持つことが必要不可欠であり,この競合解消アルゴリズムの設計・理解は分散システムの設計・理解の核心の一つである.競合解消の解決に必要な大域情報は競合条件に依存して決まり,どの競合解消アルゴリズムも完全な大域状況(あるいは履歴)を必要とするわけではないし,競合条件によっては,計算主体間での大域情報の矛盾のない認識で十分な場合もある. 本研究の目的は,大域状況の推定問題あるいは局所情報の大域化問題を競合解消問題という観点から研究することである.これは別の観点から,競合解消問題を分散システムの分散型制御問題と捕らえるとき,ある条件を満足するように分散システムを制御するために必要な情報流量を研究することでもある. 本年は論文リストにその一部を掲げた様々な成果を上げた.具体的には,1)競合解消に必要となる初期情報の非対称性,2)競合解消における大域情報として総プロセス数の重要性,3)確率的合意形成にかかる情報流量の検討,4)情報交換の道具としての放送の持つ複雑さの解析,などである.
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