目的 人類は個人としては弱小でも、集団としては多様性を内に持ち、一見不合理・非効率なところがあっても結局は合理的に構成された集団であることを、人工生命を発生・進化させて実証する。これにより、たとえば遊びといえども集団としての人間にとって様々に変化してきた環境から獲得した多様な能力の一部であり、種々の環境に対する適応性を保持するために必要な機能の発露であることを、証明・検証する。また、自由な発想に基づき、個性を生かす社会が集団としての能力を最大限引き出す形態である。これらのことを実証するため、単純化した世界モデルを用いて、GA手法による世代交代の中で人工生命とその集団が才能と個性を獲得していく進化プロセスを計算機上で遺伝的アルゴリズムによりシミュレートした。 変化する環境の基では、進化の過程で多様な才能が分散的に獲得され、様々な個性を持つ個人が出現するようになってくる。これにより集団として多様な環境に対処できる。結果として各人には得手、不得手が生まれる。また、熱中する対象は様々である。これにより集団の中での役割分担が行える。遊びにも色々な才能が要求される。逆にいえば遊びも才能である。環境から才能が訓練され、獲得されるという点において仕事と遊びに区別はない。仕事は受動的に行われることがあるか、遊びは能動的に行う点が異なるのみである。趣味が高じて職となるのはその好例である。これらを外界の変動様式、パラメータなどを変えてシミュレーションを行い、仕事上の評価関数を用いて社会的な生産性の点から実証した。 シミュレーション実験の結果、単純な能力でできる遊びしかない社会は、環境の変化に対して仕事の生産性が不安定であった。逆に複雑な能力を必要とする遊びの豊かな社会は、仕事の生産性が環境の変化に対して安定していた。
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