研究概要 |
1.差異の小さい点列(low-discrepancy sequence)として有名なSobol'列やFaure列の一般化であるNiederreiter列を用いた準モンテカルロ法による多重積分の評価(推定)と、その推定値に含まれる誤差の評価について、理論的・実験的に検討した。誤差評価を行うためには、準モンテカルロ法をランダム化する必要があるが、我々はscramble法とshift法を取り上げて検討した。また、一般化Niederreiter列の生成では、基数の選び方も重要であるので、これについても検討した。数値実験では、Barrier Option, Asian Option,およびLookback Optionを取り上げた。実験の結果、scramble法とshift法のいずれも適切な誤差評価を与えるが、基数が比較的小さい場合はshift法による誤差推定の方が精度がよく、基数が大きくなるとscramble法の方が精度がよくなる傾向が観測された。 2.アメリカ型のデリバティブの評価に準ランダムツリーを使う方法について実験的検討を行った。これは、Broadie and Glassermanが提案したランダムツリー法に準モンテカルロ法を導入したものである。これにより、もとの方法よりも誤差推定の精度が向上することが確かめられた。問題点としては、権利行使機会の増加とともに計算時間が指数関数的に増加することが挙げられる。これをどう克服するかが、今後検討すべき課題である。
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