研究概要 |
東北日本の近海で発生する大規模な津波は,主に沈み込み領域で起きる大地震により引き起こされると考えられている.一般的な地震とは異なり,数100年間隔で発生する大地震は,空間的に広大な広がりを持つ地殻破壊により起きると考えられる.歴史資料を紐解くと,津波をともなう大地震は周期的に発生している可能性が強く示唆される.更に,東北日本弧の日本海側と太平洋側では,歴史的に巨大規模津波の発生周期が大きく異なっている可能性がみえてきた.本研究では,青森県の日本海沿岸と宮城県の太平洋沿岸で巨大津波の発生周期を歴史的・地史的に明らかにし,両地域の島弧地殻構造の違いを考察した.巨大規模津波の発生周期を実際に求める試みは世界的に例が無く,またこの周期現象に基づき島弧地殻の構造と成り立ちを評価する試みは,非常にユニークであると言える. 本研究の目的は,東北日本太平洋沿岸の各地域で,巨大地震津波の再来周期を歴史的・地史的に明らかにすることである.研究費交付の初年度(平成12年度)には,歴史記録を再検討し,併せて,保存されている堆積物試料から地震津波痕跡を堆積学的及び水理工学的に検討した.数値的津波評価には,申請者らにより開発された計算プログラムを使用した.実際の計算は申請備品であるコンピューターを用いて行ない,データの集積と解析も併せて本備品を用いた.2年度(平成13年度)も同様の作業を行い,正確な大地震津波の再来周期を求め,これに基づき東北日本弧の地殻構造の成り立ちを日本海側と太平洋側で比較検討を試みた.巨大地震の再来周期を求める試みは極めてユニークで,これに基づく地殻構造の評価は非常に独創的であると考えられる.地震津波の再来に関する周期性が求まれば地震・津波災害への備えが得られ,島弧地殻のレオロジカルな特性がこれまでと異質の情報源から評価されることにより,東北日本地殻構造の成り立ちの理解に立って太平洋沿岸域の地震構造の解明も期待できる. 本研究の成果を平成13年トルコ・イスタンブールで開催されたNatural Hazards Mitigation国際ワークショップで発表し,災害科学関係者の注目を得た.
|