重要であると考えられながらも適当な手法がないために従来あまり検討されてこなかった土壌中の複雑な微生物集団に対して、本研究ではDNAの分子分類学的な手段を用いることにより、総観的に全体を把握する手法を開発した。進化の過程で塩基の置換や挿入・脱離が起きることを考えると、DNAの鎖長解析とGC含量解析を組み合わせた解析が有効であろうというアイディアを出発点とした。最終的な目標を、鎖長-GC含量二次元マップの実験的検証に置き、平成12年度および13年度において、土壌中の細菌DNAの抽出・精製法の確立、PCRプライマーの設計・電気泳動におけるゲルシステムの最適化、等のステップをクリアした。本年度は、特に細菌の16SリボソームDNA(rDNA)の変移領域Iに対する鎖長多型解析を実際の土壌系に適用し、季節変化や土壌の差および重金属による汚染度によって、差長多型パターンが変化すること示し論文発表した(Soil Microorganisms)。また、活性汚泥における細菌の活動の変化が鎖長パターンの変化として捉えられることを示し論文発表した(International Journal of Environment and Pollution)。更に、糸状菌の18S rDNAにこの手法を適用した結果、鎖長よりもGC含量の方が有効であることが分った。また、定量PCRの適用により、細菌と糸状菌のバイオマス比についての情報が効率的に得られることが分った(Soil Microorganismsに投稿中)。鎖長-GC含量二次元マッピングについては、ゲルを最適化することによって実現できることが分った。これらの結果を踏まえて、今後、手法の確立を図ると共に、多くの系に適用事例を増やし、土壌のデータベースに発展させることを狙っている。この手法は医学的な応用等も可能であり、その観点からの検討も進めたいと考えている。
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