研究概要 |
放射線誘発のマウス急性骨髄性白血病と、染色体2番中間部の欠失との関係を明らかにする目的で、以下の3つの実験を行った。 I.ミュータントマウスの染色体欠失マッピング。 胚細胞のがん抑制遺伝子がノックアウト(ヘミ接合体)になっているミュータントマウスの候補は、5系統あった。Del(2)59H,Del(2)Sey3Hが、がん抑制遺伝子想定部位を欠失していることはすでに明らかにしていたが、新たにDel(2)Sey4Hもこの部位を欠失することを確認した。 II.ミュータントマウスの放射線感受性と白血病誘発試験。 Del(2)Sey3H,Del(2)Sey4HはDel(2)59Hより繁殖力が高かったので、この2系統を用いることにした。染色体欠失部位にがん抑制遺伝子が存在すると想定しているので、これらミュータントは多段階発がんにおいてすでに1ヒット先行する(胚細胞突然変異)。そこで、γ線(3.0Gy)を照射して造血系細胞に2ヒット目(体細胞突然変異)を惹起し、白血病発症を対象群(胚細胞突然変異なし)と比較する。現在までのところ、Sey3HxJF1のミュータントマウス31匹、コントロールマウス29匹。また、Sey3HxC3Hのミュータントマウス9匹、コントロールマウス25匹をそろえ、放射線照射し、AML発症を観察している。 III.がん抑制遺伝子クローニング。 がん抑制遺伝子座(1cM)を狭めるために、国立放射線医学総合研究所(放医研)が保有するマウス白血病株159例について、がん抑制遺伝子座の欠失(LOH)を、DNAマーカー(D2Mit15)としてFISH(fluorescence in situ hybridization)法でスクリーニングした。その結果、D2Mit15の欠失(LOH)が、92.4%のAMLに認められ、7.6%は正常であった。放射線誘発マウス急性骨髄性白血病では、染色体2番中間部(49.0cMを含む)の欠失を伴うことが明らかになった。
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