ワトソン-クリックの特異的な塩基対認識に基づいた、核酸部位(センス、特にRNA)に対して相補的なアンチセンスの塩基配列を有する新規人工核酸の開発が注目されている。その中で私は、DNAのそれぞれの5'位のメチレン基を欠いた、光学活性なD型の炭素環5'-NOR-オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)を合成し、これらがターゲットであるRNAに選択的に作用でき、生体内で安定な、抗がん作用を有する新規アンチセンス人工核酸として、理想的な性質を持っている事を見出した。今回、これらの構造、性質、および、機能性について、より詳細に調べた。また、S-ODNを用いて抗がん活性を見出した塩基配列を有する、アンチセンス炭素環5'-NOR-ODNの合成について検討した。 (1)炭素環5'-NOR-ODNの構造、性質、および機能性:炭素環5'-NOR-ODNについて、UVスペクトルならびにCDスペクトルによる解析を行ない、天然型ODN、S-ODNと比較することにより、それらの水溶液中での構造や、RNAへの高い親和性の理由について、より詳細に調べた。また、各種核酸分解酵素への安定性を調べた結果、炭素環ODNは非常に安定であった。 (2)アンチセンス炭素環5'-NOR-ODNの合成:キラルキャピラリー電気泳動を用いて光学純度の分析を行い、高い光学純度(>99%e.e.)を持つ出発原料である、炭素環ヌクレオシド類(アデノシン、チミジン、グアノシン類)の合成を行なった。また、それらを誘導し、抗がん活性を有するアンチセンス炭素環ODNの合成について検討した。
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