研究概要 |
1.ラット小脳顆粒細胞の初代培養系を用いて,神経細胞の分化関連遺伝子の発現をイムノブロットとノーザンブロットで経時的に調べた.トポII阻害剤を培地に加えたシリーズとの比較により,これらの遺伝子が次の3群に分類できることが明らかになった.培養過程で発現の誘導が起こり,トポII阻害剤で誘導が抑制される(Class I).誘導されるが,トポII阻害剤で誘導が抑制されない(Class II).培養初期からすでに発現しており,トポII阻害剤では抑制されない(Class III).この結果は分化の過程で発現が誘導される遺伝子にはトポIIβの活性に依存するものと,依存しないものがあることを示している.また,発現誘導とトポII阻害剤の効果は転写以前のレベルで起こっていることが示唆された. 2.それぞれのクラスに属する遺伝子の塩基配列をデータベースから抽出し,GC含量,CpGの出現頻度,CpGアイランドの存否,レトロポソンの種類,MARの予測などの解析を行った.ただし,ラットの遺伝子配列はほとんど入手できないため,現段階ではヒトのゲノム配列から推測するしか方法がなかった.その結果,仮説から予測されるようにClass I遺伝子がATに富むアイソコアにマップされる傾向は認められたが,明らかな例外も存在した. 3.以上の解析から,トポIIβに依存した遺伝子発現がアイソコア構造のみに依存するという仮定は単純化しすぎているのではないかと考えるに至った.次年度は少数の遺伝子に焦点を絞り,遺伝子領域のDNase Iに対する感受性などを測定することによって,クロマチンの高次構造変化を実際に検出することを試みる.
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