研究概要 |
本年度は南極海水から単離した低温細菌の生理学的性質を明らかにするとともに本菌をCytophaga sp.CKU-1と命名した。また本菌の可溶性画分に存在するNAD及びPLP要求性酵素の検索を行い,本菌がNAD依存性アルコールデヒドロゲナーゼ及びバリンデヒドロゲナーゼを生産することを見いだした。アルコールデヒドロゲナーゼは,分子量168,000のホモテトラマーであり(α-ヘリックス含量:18%),炭素数1から10の1,2級アルコールに広く作用した。本酵素は低温菌由来でありながら高い耐熱性を示し75℃における活性の半減期は26分であった。反応速度論的解析の結果,本酵素反応はTheorell-Chance機構により進行することが明らかとなった。またアルデヒドデヒドロゲナーゼは,5'-AMPセファロースなどの各種クロマトグラフィーにより電気泳動的に単一に精製した(比活性:33U/mg)。本酵素は分子質量114,000Daのホモダイマーであり,炭素数1から10の直鎖状アルデヒド及び芳香族アルデヒドに広く作用した。また本酵素は熱に不安定な好冷性酵素の温度特性を示し40,45,50℃における活性の半減時間はそれぞれ約160,14,3分であった。さらにバリンデヒドロゲナーゼは,Blue-Sepharoseなどの各種クロマトグラフィーにより電気泳動的に単一に精製した(比活性:21U/mg)。本酵素は分子量154,000のホモテトラマーであり,基質特異性は低く,酸化的脱アミノ反応ではL-バリン,L-ロイシン,L-イソロイシン,DL-ノルバリンに,還元的アミノ化反応では2-ケトイソ吉草酸,2-ケト吉草酸,2-ケト-n-酪酸,2-ケトヘキサン酸などに広く作用した。最適反応温度は酸化的脱アミノ反応及び還元的アミノ化反応とも30℃であり好冷性酵素の温度特性を示した。
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