研究概要 |
Jurkat細胞の培養に用いられる無血清培地には,Seが亜セレン酸ナトリウムの形で添加されており,Seの添加は細胞,特に免疫系や神経系の細胞の生存維持に必須である.一方,血清添加培養ではSeの添加が不要なことから,血清中にはSeを運搬して細胞にSeを供給する因子が存在すると予想された.これまでの研究から,ヒト血清には2種のSe含有蛋白質が存在することが分かっていたので,このうちいずれがSe運搬作用を有するかを欠乏血清を用いて同定することにした. そこでまずヒト血清をSe含有蛋白質であるeGPx,SePに対するモノクローナル抗体あるいは特異的ポリクローナル抗体を不溶化したカラムに添加し,eGPx欠乏血清,SeP欠乏血清をそれぞれ調製した.得られたそれぞれの血清についてeGPxまたはSePが欠乏していることを,研究室で開発したELISA法で確認した. 次にこれらの欠乏血清存在下にJurkat細胞を培養し,いずれの欠乏血清で細胞がSe欠乏になるかを調べた.細胞のSe含量(DANを用いる蛍光光度法)や細胞内のSe含有酵素(細胞質に存在するcGPxやチオレドキシン還元酵素)の活性を測定したところ,SeP欠乏血清を用いて培養した細胞の場合のみSe含量,cGPx活性,チオレドキシン還元酵素活性の低下が認められた.培養時間依存性を調べたところ,cGPx活性は1日目で50%,2日目で25%となり,この細胞の増殖速度と一致した. 次にSe欠乏細胞を,SePを再添加したSeP欠乏培地で培養し,cGPx活性を測定した.添加したSePの濃度に依存したcGPx活性の回復が認められた. 以上の研究から,SePがSe運搬蛋白質であることが明らかになった.
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