研究概要 |
申請者は最近,高塩食で飼育したラットの副腎皮質に特異的に発現する遺伝子をクローニングした。この遺伝子はN末端1Aなどステロイド産生酵素遺伝子の発現を抑制している,2)ACTH刺激によりPKA系が活性化されると核内のSIKは細胞質に移行しCYP11A遺伝子の転写抑制が解除される,3)同時にSIK遺伝子自身はPKA系で転写・翻訳される。これらの事実はSIKが細胞内で移動することがその生理機能にエッセンシャルであること,またACTHに対する副腎皮質の応答現象が早期応答と遅延応答の2段階に分かれる現象にSIKの細胞内移動が深く関わることを示唆している。SIKタンパク質の種々の断片を作成しそのそれぞれと蛍光タンパク質(GFP)を融合させたキメラSIKを作りそれをY1細胞で発現させた。そしてACTH刺激に伴って起こるSIKの細胞内移動を検討した。その結果SIKタンパク質の核への移行にはC末端に位置する塩基性アミノ酸を比較的多く含む50アミノ酸残基が必要である,一方SIKの核外への移行にはSer577のPKAによるリン酸化とSIKのリン酸化活性,およびC-末端の50アミノ酸残基が必要であることが明らかとなった。SIKの細胞内移動を解析しその意義をさらに詳細に明らかにするためには,細胞内でSIKと相互作用するタンパク質を同定し,そのタンパク質の発現部位を明らかにすること,そしてそのタンパク質がACTH刺激時に細胞内でどのような挙動をとるかを明らかにする必要がある。酵母2-ハイブリッド法を用いてSIKのオトリ断片と相互作用する20個のクローンを分離した。現在これらのクローンの本体を明らかにする研究に全力を集中している。
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