研究概要 |
魚には他の動物にはない特徴がいろいろとあり、これを実験動物として有効に活用することは重要であると考える。例えば、魚は中枢神経であっても損傷から回復することが知られており、この過程を研究することで、人において神経損傷の治療に役立つ知見が得られるのではないかと期待される。あまり利用されていない理由として遺伝学的な解析および分子生物学的な解析が不十分である事が上げられるが、近年、全世界の研究者の協力でゼブラフィッシュとティラピアの全ゲノム解析のプログラムが始まり、環境は整いつつある。我々はティラピアを用いたトランスジェニック魚を計画していたが、ティラピアの解析プロジェクトは進行が遅いので、進行が早く遺伝学的な解析がやり易いと考えられるゼブラフィッシュを用いて新しいトランスジェニック魚を作成することにした。計画はそのため多少遅れてはいるが、まずまず順調に進行している。 我々は神経損傷からの回復に関与する遺伝子を用いたトランスジェニック魚を計画し、今年度は基礎的な研究を行った。モデルシステムとしてキンギョ視神経を用い、視神経損傷後に活性化されるcDNAをキンギョ網膜からクローニングした。現在、Na,K-ATPase、トランスグルタミナーゼ、purpurin、Arc p41、等のcDNAのクローニングを終了した。シークエンスや視神経切断後の動態等付いては学会などで発表している。今後はこれらcDNAの遺伝子をクローニングし、トランスジーンを構築しゼブラフィッシュ卵にインジェクトし、トランスジェニック魚の開発を行うつもりである。
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