細胞に時空制御された入力信号を与える方法を開発し、細胞増殖、分化、走化性応答の情報伝達回路の解析に応用することが本研究の目的である。特に 細胞増殖と分化、および走化性の情報伝達回路を測定の対象としている。 当初計画したパッチピペット法、すなわちパッチピペットを細胞膜上に立て、内液をペプチドホルモン(EGFやNGF)やcAMP溶液で潅流すること。その際に、ピペットの場所、溶液の濃度と流速を変化させることにより、入力を時空制御する方法の開発をおこなうとともに、マイクロビーズ法、すなわち情報伝達分子を表面に共有結合したビーズを光ピンセットにより細胞表面の任意の場所に接触させ、入力を空間制御する方法を開発している。 マイクロビーズ法の場合も、ビーズの大きさや伝達分子の表面密度を変えることにより、入力の大きさを調整することが可能である。 パッチピペット法においては、1分子観察のために活性を失わないよう蛍光標識したEGF(上皮成長因子)、NGF(神経成長因子)、cAMP(細胞性粘菌の走化性因子)を合成し、それらの活性を評価し満足できる結果を得た。ビーズ法においても、直径1ミクロンのラテックスビーズ表面にEGFを活性を失わないように結合させ、細胞応答を起こさせることができるようになった。現在、入力刺激を時空制御することを試みている。
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