色素上皮細胞への遺伝子導入と眼球内移植技術の確立に向け以下の実験を行った。 1、色素上皮細胞の培養:イモリの眼球から色素上皮細胞層を剥離し、エラスターゼ(1mg/ml)処理により色素上皮細胞を単離した。細胞は、コラーゲンIVをコートしたプラスチック培養皿にまき、牛胎児血清(10%)を含むL-15培地中で培養した。この方法により再現よく培養が可能となった。 2、色素上皮細胞への遺伝子導入:単離直後や培養中の色素上皮細胞に遺伝子導入を試みた。導入遺伝子としてはpCS2^*mt-SGPプラスミド発現ベクターを用いた。まず、単離直後の色素上皮細胞へ、エレクトロポレーション法により導入を試みたが、細胞の生存率が悪く、よい結果は得られなかった。一方、培養14日目の色素上皮細胞に対して、リポフェクション法を試みた結果、導入後24時間でレポーター(GFP)の発現を観察することができた。導入率は1〜2%だった。 3、色素上皮細胞の眼球内移植:遺伝子導入を施した単離直後の色素上皮細胞や培養した色素上皮細胞を回収し、再生15日目のイモリの眼球内に約500個注入した。再生35日で網膜を摘出し、検討したが、GFP陽性の細胞が再生網膜中に存在しなかった。現在、色素上皮細胞層を結合組織ごと移植する実験を行っており、良好な結果を得つつある。 4、網膜再生関連遺伝子の単離:イモリの胚からcDNAライブラリーを作製した。Neurogenic geneとしてNotch、Delta、Hesをコードする遺伝子のPCR断片を単離した。現在、スクリーニングを行い全長の配列を決定しつつある。今後、特異性の高いプローブを用いて、発生や再生におけるそれらの発現様式をin situハイブリダイゼーションにより調べる予定である。
|