疾患成因に関わる活性酸素・活性窒素の無侵襲画像解析手法の開発

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12878170
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 内海 英雄 九州大学, 大学院・薬学研究院, 教授 (20101694)
• 研究分担者: 市川 和洋 九州大学, 大学院・薬学研究院, 助手 (10271115) ; 輿石 一郎 九州大学, 大学院・薬学研究院, 助教授 (20170235)
• キーワード: 生体ESR-CT / スピントラップ / フリーラジカル / 活性酸素 / 活性窒素 / 病態解析

研究概要

多くの疾患の発症・進展にフリーラジカル反応が関与することが明らかになろうとしている。その機序が明らかになるにつれ単一のラジカル種による障害のみならず複数のラジカル種によるクロストークの重要性が指摘され始めている。このような、ラジカル同士のクロストークの重要性を実証するには、これらフリーラジカルが各々組織のどこで・どの程度産生しているかを画像解析することが望まれる。そこで、複数のフリーラジカルをESR-CTにより各々分別画像化するためのアルゴリズムを確立した。
生体計測L-band ESRの外部磁場内に磁場勾配を発生させる三次元磁場勾配コイルおよび掃引コイルを設置し、生体計測ESR-CTを構築した。まず、Z-X平面の磁場勾配を回転させ、6射影軸毎に15〜20の投影スペクトルを得た。各投影スペクトルをShepp-Loganフィルタを用いたフィルタ補正逆投影法により、スペクトル-空間画像を再構成し、さらに、得られた画像を代数的復元法により補正を行った。次に、6スペクトル-空間画像から各ラジカルの空間情報を分離し、再度逆投影と補正を行い、各ラジカル種の二次元空間画像を構築した。確立したアルゴリズムをヒドロキシラジカルと一酸化窒素ラジカルの画像化への適用を試みた。両ラジカルは生体内での寿命が極めて短く、スピントラップ剤を用いて安定ラジカルの形に変換する必要がある。両ラジカルを各々5,5-dimethyl-1-pyrroline-N-oxide(DMPO)およびFe^+-N-methyl-D-glucamine dithiocarbamate(Fe-MGD)に捕捉し、得られたDMPO-OHとNO-Fe-MGDを分離画像化した。DMPO-OHのシグナルは時間と共に減衰するので、減衰速度より補外法によりデータ取り込み開始時のシグナル強度に補正した。本年は、DMPO-OHとNO-Fe-MGDの標準物質を空間配置したファントムを用いてそのアルゴリズムの確立を試み、本アルゴリズムの有効性を実証した。来年度は、病態の発症・進展に伴い生体内で産生される活性酸素・活性窒素種の生体解析を試みる。

研究成果

• [文献書誌] Matsumoto K,Utsumi H.: "Development of separable electron spin resonace-computed tomography imaging for multiple radical species : An applicatin to ・OH and ・NO."Biophysical Journal. 79. 3341-3349 (2000)
• [文献書誌] Inoguchi T,Li P,Umeda F,Yu HY,Kakimoto M,Imamura M,Aoki T,Etoh T,Hashimoto T,Naruse M,Sano H,Utsumi H,Nawata H.: "High glucose level and free fatty acid stimulate reactive oxygen species production through protein kinase C-dependent activation of NAD(P)H oxidase in cultured vascular cells."Diabbetes. 49. 1939-1945 (2000)
• [文献書誌] Kinugawa S,Tsutsui H,Hayashidani S,Ide T,Suematsu N,Satoh S,Utsumi H,Takeshita A.: "Treatment with dimethylthiourea prevents left ventricular remodeling and failure after experimental myocardial infarction in mice : Role of oxidative stress."Circulation Research. 87. 392-398 (2000)
• [文献書誌] Matsumoto K,Endo K,Utsumi H.: "In vivo electron spin resonance assessment of decay constant of nitroxyl radical in selenium-deficient rat."Biological Pharmaceutical Bulltin. 23. 641-644 (2000)
• [文献書誌] Sano H,Naruse M,Matsumoto K,Oi T,Utsumi H.: "A new nitroxy-probe with retention in the brain and its application for brain imaging."Free Radical Biology & Medicine. 28. 959-969 (2000)