前年度で得られたポリ乳酸ラセミ結晶の加水分解特性について、アルカリ水溶液または酵素により検討した。加水分解挙動は、水晶発振子(QCM)法を用い、アルカリ水溶液または酵素溶液に所定時間浸した際の振動数変化、つまり超薄膜の重量減少から追跡した。酵素は各種のエステル分解酵素を用いた。単独膜、または単に混合溶液をキャストして得られる膜と比較検討した。膜圧およびポリマーの分子量の影響について詳細に検討した。上記では金が蒸着してあるQCMを基板として用いているが、超薄膜調製の一般性を得るためにさまざまな高分子や無機材料表面へのラセミ結晶超薄膜の積層挙動について検討した。方法は上記で最適化されたものを用いる。基板としてはポリメチルメタクリレートやシリコーンなどのさまざまな高分子材料と、ステンレス板やセラミックスなどの無機材料を用いた。ラセミ結晶形成の解析は上記の手法を用いた。一方、さまざまな材料上に形成させたラセミ結晶超薄膜上への細胞接着性あるいは血液凝固活性等について検討した。 その結果、分子レベルで構造が制御された、ポリ乳酸ラセミ結晶の超薄膜の調製が可能であることが分かり、材料の表面修飾による機能改善、また機能改変について詳細に調べることができた。
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