研究課題
ジェレミー・ベンサムの経済思想をその統治構想との関連で位置づけるという研究課題の発展可能性を探るために、「企画調査」として主に3つの方向で調査研究を行なった。第1に、19世紀半ばの『ベンサム著作集』(バウリング版)に替わるべき新『著作集』がまだ編集途上にあるという状況のなかで資料的な開拓を進めるために、マニュスクリプトに基づく調査を行なった。ベンサム・プロジェグト(University College London)のメンバーの協力のもとでロンドンでの調査を行なうとともに、Bentham Manuscriptのうち特に関連の深いBox17の解読作業を進め、電子テクスト化した。第2に、ベンサムについてはかねてより個人主義的な自由主義か全体主義的な集計主義かというイメージの対立があるが、これをイギリス、フランスの思想的諸系譜との関連で位置づけ直すために、複数回のセミナーをアレンジして議論の場を設けた。第3に、ロンドンよりベンサム・プロジェクトのDr.Philip Schofieldを招き、研究代表者の深貝もペーパーを準備してベンサム研究のセミナーを開催し、今後の研究の発展方向を検討した(3月)。なお、これらの調査研究と並行して、研究組織メンバーのうち2名(深貝、有江)がHETSA(オーストラリア経済思想史学会)の大会でベンサム論の報告を行なった。国際的にベンサム経済思想の研究蓄積が不十分であり、ロンドンのベンサム・プロジェクトが政治思想、政治哲学に傾斜しているなかで、日本側のイニシアティヴでこの領域の研究を推進していくことが求められている。
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