研究課題/領域番号 |
12CE2002
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研究機関 | 政策研究大学院大学 |
研究代表者 |
御厨 貴 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (00092338)
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研究分担者 |
岩間 陽子 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (70271004)
青木 保 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (80062636)
伊藤 隆 政策研究大学院大学, 政策情報研究センター, 教授 (30011323)
竹中 治堅 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (70313484)
佐道 明広 政策研究大学院大学, 政策研究プロジェクトセンター, 助教授 (10303091)
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キーワード | オーラルヒストリー / オーラル・メソッド / 政策決定過程 / インスティテューショナル・メモリーズ / インタヴュー |
研究概要 |
本研究では、オーラル・メソッドを通じて、官庁を始めとする組織や機構の持つインスティテユーショナル・メモリーズ(構造的認識)の解明と、そこでの複層的政策決定過程の再構築を図ることを目的の一つとしている。現在継続中のものを含め、これまで約80名に対してインタヴューを行ってきており、着実にインタヴューデータは集積されてきている。インタヴューの形態についても、個人のライフヒストリーを聞く形式、政策テーマに沿って複数の人物に聞いていくもの、更に組織を対象として関係者から聞き取りを行う形と、幾つかのパターンとそれぞれに応じたインタヴュー方法も確立されつつある。 「政治研究班」では、前年度に引き続き元総理大臣および側近クラスの人々のインタヴューを行い、内閣における政策決定過程の歴史的変化を考察する上で貴重なオーラル・データの質的向上・量的拡大を共に図ることが出来た。また、事務次官クラスの開発官僚・文部官僚・防衛官僚・大蔵官僚へのオーラルにおいても、戦後日本の構造的変化を分析する上で貴重なデータの蓄積を増やしている。新たに、元最高裁長官、複数の労働組合幹部へのインタヴューも開始し、オーラルの対象領域も広げつつある。 「経済外交研究班」では、経済担当の元外務審議官(五人)のオーラル・データを蓄積しつつ、国際開発の経済的側面の洗い出しに努めている。また、元外務事務次官数名のインタヴューも実施し、我が国の外交政策の推移の究明に取り組んでいる。更に、捕鯨問題を巡る外交について複数の関係者へのインタヴューを集中的に実施するなど、政策テーマ別のオーラルも進めている。 「文化研究班」では、日本の経済進出と文化摩擦の関係にテーマを絞り、日系企業数社にアジア地域への工場進出に関するインタヴューを続けている。 「科学技術研究班」では、前年度に引き続き海軍兵学校出身の技術者へのオーラルにより、彼らが高度成長期に果たした役割と教育システムの解明に努めている。 「行政改革研究班」では、行革会議に参加した官僚へのオーラル・データ及び入手した文献資料を基に、複層的政策決定過程の分析を開始した。 「安全保障研究班」では、80年代の冷戦をテーマに、複数の元海上幕僚長及び米国元国防総省関係者へのオーラルを実施し、日米両国でデータの収集と分析に取り組んでいる。また、新たに我が国のPKO活動の検証をテーマに元総理大臣、外務大臣へのインタヴューを開始した。 「データ処理班」は、各班によって集積されたオーラルのデータベースの構築に取り組み、方法論研究会との連携のもと、データの処理に有効な方法論の開発の検討を続けている。また、オーディオ・ヴィジュアル版オーラルヒストリーについても試作テープを完成させた。更に、オーラルヒストリーのインフラストラクチャーとでもいうべき、インタヴュー対象者との法的な覚書の作成、インタヴューの音声・活字双方の記録の保存方法などについても基盤整備ができたといえる。今後できるだけ広範なデータの公開を念頭に、覚書のバリエーションを作成するとともに、記録保存作業の標準化に取り組み、終了したインタヴュー・データの冊子化を一層進める予定である。 「ケース作成研究班」は、米国で収集したケース・サンプルを基に、政策研究に最も適したアプローチを開発中である。 オーラルヒストリーの啓蒙、普及については、「学としてのオーラルヒストリー(民俗学から政策研究まで)」と題し、第2回目となる研究集会を開催(9月8日)し、本研究への理解の促進のため「公開インタヴュー」と、オーラル手法の比較を巡って異なる研究分野の研究者とパネルディスカッションを行った。更に、研究内容や進行状況を知らせるニューズレターを前年度に引き続き発行(13年度3回発行)すると共に、ホームページ(日・英語版)を開設した。様々なオーラルを実践している個人や組織についての情報収集も進め、公式、非公式な接触を通じてのネットワーク作りの基礎作業にも取り組んでおり、次年度の国際シンポジウム開催をきっかけに、こうした連携の拡大強化を図って行きたい。今後ニューズレター発行の頻度を高めること、ホームページによる情報、意見交換の双方向性を探るなど、これらの広報手段をオーラルヒストリーの普及へ向け、一層効果的に活用していくことが今後の課題であろう。
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