研究分担者 |
斉藤 軍治 京都大学, 理学研究科, 教授 (40132724)
杉浦 幸雄 京都大学, 化学研究所, 教授 (40025698)
小松 紘一 京都大学, 化学研究所, 教授 (70026243)
山口 茂弘 名古屋大学, 理学研究科, 助教授 (60260618)
佐藤 直樹 京都大学, 化学研究所, 教授 (10170771)
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研究概要 |
題目「anti,cisoid交互配座オリゴシランの合成と光物性:σ共役系とπ共役系の対応」 オリゴシランσ共役系が示す物性はケイ素主鎖の立体配座に大きく依存する。今回われわれは、1,6-ジンラビシクロ[4.4.0]デカンを構成単位として用いることで、ドコサシラン(Si_<22>)までの鎖長のanti,cisid交互配座を有するオリゴシランの合成に成功した。その光物性評価をおこなったところ、吸収極大波長はケイ素鎖長によらず一定であった。この結果は、anti配座はσ共役を延伸するのに対し、cisoid配座は共役を分断することを示唆するものであり、フェニレンπ共役系におけるpara、metaリンクの役割にそれぞれ相当することを意味する。このように、本研究はσ共役系における配座異性とπ共役系の位置異性が対応すること初めて明確に示した例であり、σ共役分子の重要な合成設計指針を与えるものである。(玉尾) 題目「開口フラーレンの合成と100%水素導入」 小分子を内包したフラーレンの有機化学的合成を目的として、C_<60>とトリアジン誘導体との熱反応、光照射による二重結合の酸化的開裂、さらに開口部への硫黄導入反応という3段階を経て、13員環の開口部をもつC_<60>誘導体を合成し、高圧の水素ガスを作用させることにより、この開口部からフラーレン骨格内部に完全に水素を導入することに初めて成功した。内包された水素は160℃以上の加熱により放出され、この開ロフラーレンは水素分子のナノカプセルとしての利用が可能である。またこの水素内包体のMALDI-TOF MS分析において、レーザー照射エネルギーによって開口部が自己修復し、水素内包C_<60>(H_2@C_<60>)が気相で生成することを見出した。(小松) 題目「ビシクロ骨格により安定化されたカチオン性オリゴチオフェンの合成」 周囲を完全にビシクロ[2.2.2]オクテンで取り囲んだチオフェン2□ 8量体を合成し、一電子酸化により、2,3量体のラジカルカチオン塩および4,6,8量体のジカチオン塩を初めて安定に単離し、それらの詳細な構造をX線結晶解析により明らかにした。(小松) 題目「亜鉛フィンガー内の構造亜鉛の機能亜鉛への変換による新規機能性金属タンパク質の構築」 配位飽和な亜鉛フィンガーへ配位空座を導入するために、配位アミノ酸である2個のシステインと2個
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のヒスチジンを各々グリシンまたはアラニンに置換した3配位型亜鉛フィンガーを作製し、これらの変異型亜鉛フィンガーペプチドによる酢酸4-ニトロフェニルエステルの加水分解反応を検討した。その結果、野性型亜鉛フィンガーペプチドには触媒作用が認められなかったが、配位空座を有する変異型ペプチドはいずれも加水分解反応を促進した。新たに設計した4個のヒスチジンをもつ6配位の亜鉛フィンガーペプチドは、代表的な加水分解酵素モデル化合物である亜鉛-サイクレン錯体の約25倍もの大きな反応性を示した。また、本新規亜鉛フィンガーペプチドは、GCボックスを導入したプラスミドDNAに対し、明らかに切断反応を与え、リン酸エステルの加水分解能を示した。(杉浦) 題目「ヘテロ原子π共役系を用いたエキゾチックな有機導電体・超伝導体の開発」 π共役系分子の設計、錯体開発、外場(圧力、光、湿度など)の制御を通じた、特異的な伝導挙動を示す系の探索、および新機能性物質の開発を行った。三角格子構造を持つ擬二次元有機伝導体κ-(ET)_2Xにおいて一軸性ひずみ効果を系統的に調べ、電子相関の強さ(U/W)に加え格子構造の異方性(t'/t)も電子状態および超伝導転移を決定するための重要なパラメータである事を明らかにした。同様の三角格子構造を持つκ-(EOET)_2GaCl_4についても、磁化率および圧力下の伝導度測定を行いt'/t値と関連させて電子状態を検討した。(BO)_2Br(H_2O)_3錯体を高分子分散膜に組み込んだ導電性薄膜の伝導度が、湿度により10倍程度変化することを見出した。(EDO-TTF)_2PF_6において、極めて高効率で超高速(20psec以下)の光誘起金属-絶縁体相転移を観測した。 1-Ethyl-3-methyl-imidazolium陽イオンを用いた室温溶融塩において、低粘性(13-18cP)ならびに高イオン導電性(1.8-2.7x10^<-2>Scm^<-1>)を示す物質を開発した。インドリンと各種置換TCNQを用いた分子内電荷移動化合物において、TCNQ部分の置換基の変化こよる分子内イオン化量σの変化を見出した。(斉藤) 題目「構造多形に依存したフタロシアニンラジカル薄膜の空状態電子構造の解明」 芳香族系ラジカル分子の集合体は、その構造に基づく磁性・電導性などの特徴的な電子物性が期待できる。一方、フタロシアニンは多くの金属元素と錯形成するが、1価金属とくにリチウムとのラジカル錯体は特徴的な電子物性を示し、元素科学の立場からも興味深い。これらの観点から、直接的な情報が得られる逆光電子分光法の適角により最近見いだした、フタロシアニンラジカルがx形とα形の蒸着薄膜で示す互いに異なる空状態電子構造について、より入念な膜構造評価や逆光電子スペクトルの差異に直結する個々の問題に特化した入念な量子化学計算などを行い、その解明を図った。ことに、分子間の準結合的な相互作用がx形薄膜の電子構造を支配していること、半占有軌道が導く電子構造がそのために電子物性の顕著な違いをもたらしていることを明らかにした。本研究は、有機分子集合体の構造物性相関を電子構造の視点から的確に把握した適例と言えよう。(佐藤) 題目「複数のπ共役鎖を共有結合によりバンドル(束)化したπ共役系分子バンドルの構築」 まずモデル系として,ボラジン(B_3N_3)を核構造に用い,三つのアントラセン骨格をバンドル化したトリアントリルボラジンを設計した.アニリン誘導体とBCl_3とを反応させた後,アントリルリチウムと反応させるというone-pot合成により,一連のN, N', N"-トリス(p-置換フェニル)-B, B', B"-トリアントリルボラジン誘導体を合成した.X線結晶構造解析の結果,これらは何れも,三つのアントリル基および三つのフェニル基がボラジン平面に対してほぼ垂直に固定化された構造をもつことがわかった.また,物性に及ぼすバンドル化の効果について検討した結果,1)フェニル基のp位の置換基により,アントラセン部位の酸化還元特性の修飾が可能であること,2)バンドル化により蛍光量子収率が大幅に増大するといった顕著な効果が観測された.(山口) 隠す
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