• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2003 年度 実績報告書

個体生命を支える素機構の統合

研究課題

研究課題/領域番号 12CE2007
研究機関大阪大学

研究代表者

近藤 寿人  大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (70127083)

研究分担者 杉野 明雄  大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (90231737)
田中 亀代次  大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (80144450)
濱田 博司  大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (00208589)
米田 悦啓  大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (80191667)
辻本 賀英  大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70132735)
キーワードゲノム情報 / 転写調節 / シグナル分子 / DNA複製 / DNA修復 / 細胞内物質輸送 / アポトーシス / ノックアウトマウス
研究概要

私たちの体をつくる多数の細胞の各々が、私たちの生命を生み出す単位である。それぞれの細胞が持つ核に、一組の遺伝情報(ゲノム情報)が与えられている。このゲノム情報をもとに生命を成り立たせる素機構には大きく分けて3つの種類がある。(1)この核の中のゲノムの特定の部分の情報だけを読み出す素機構。転写調節因子群を中心としたこの素機構の作用を出発点として、細胞分化が引き起され、個体が形作られる。(2)ゲノム情報の伝達と維持のための素機構。ゲノム情報は1個の受精卵から個体のなかのすべての細胞まで、また子孫にまで、間違いなく正確に複製され、伝えられなければならない。そのためにDNAを修復しながら複製し、同時に細胞増殖をコントロールするための多くの素機構がある。(3)「ゲノム情報を細胞生命に転換」するための一般性を持った細胞レベルでの素機構。核一細胞質間輸送の調節やアポトーシス(プログラム細胞死)の調節などがこれにあたる。生命を生み出す仕組みを明らかにするには、沢山の素機構が関与する高次の制御システムの理解が重要であることから、本研究を実施している。
平成15年度には、以下に述べる研究の進展がみられた。
1.SOX,Pax,POUファミリーの転写調節因子がさまざまな組合わせでヘテロ2量体をつくり、その2量体ごとに異なった標的遺伝子のセットを選択すること、従って、主要な2量体の構成の変化が細胞分化をもたらすことを示した。これを一般化して、近藤・濱田が共同研究を実施し、神経幹細胞を成立させる転写制御機構を明らかにした。Sox2遺伝子の発現が沢山の異なったエンハンサーの活性が重なりあって実現されることを示し、神経系の領域化機構の解明に新しい道を開いた。(近藤)
2.レチノイン酸不活性化酵素CYP26B1のノックアウトマウスをつくり、レチノイン酸が四肢形成において遠近位置情報として働くことを明らかにした。Oct3/4の標的遺伝子の候補(226)を欠損する胚をつくり、それが個体の左右性の成立に関与することを示した。ES細胞などを用いて、Oct3/4とSOX2で制御されている遺伝子の網羅的探索を始めた(濱田、近藤の共同研究)。新規なSonic Hedgehogによって誘導される神経軸索伸長因子を発見した。(濱田)
3.紫外線損傷を受けた細胞におけるコケイン症候群A群(CSA)蛋白質の核マトリクスへの移行機構を明らかにした。とりわけて、CSA蛋白質の核マトリクスへの移行が転写と共役した修復に関連した現象であること、CSA蛋白質の移行にはXPG、CSB蛋白質の機能が必要であることを発見した。転写と共役したDNA修復過程におけるRNA polymerase IIoの制御に、CSA複合体が関与していることを示した。UVS症候群原因遺伝子の同定を行い、コケイン症候群B群(CSB)遺伝子であることを明かにした。(田中)
4.真核生物染色体DNA複製の分子機構とS一期のチェックポイント制御機構を出芽酵母細胞を用いて研究してきた。DNAポリメラーゼε複合体が、染色体DNAのleading鎖を合成していること、またS期チェックポイント制御や、染色体テロメア領域の長さの調節、細胞の寿命等にも関与していることが明らかにした。多細胞動物細胞内でのDNAポリメラーゼεの機能を検証する目的で、マウス変異ポリメラーゼε遺伝子を持つマウスES細胞を作成した。(杉野)
5.アポトーシスのシグナル伝達メカニズムを、「trigger」、「decision」、「execution」の3つのステップについて解析を行った。DNA2重鎖切断によるアポトーシスのシグナルを核からミトコンドリアに伝達する因子がリンカーヒストンH1.2であることを証明した。また、小胞体ストレスにより惹起されるヒト細胞のアポトーシスの初期過程にカスペース4が関与することを示した。辻本・米田の共同研究によってクロマチン凝縮関連因子Acinusの解析を行ない、辻本・田中の共同研究によってAcinus結合因子を多数同定した。(辻本)
6.核蛋白質輸送と転写調節の関連に焦点を当てた研究を進めた。特にステロールホメオスタシスを制御する転写因子SREBP-2が細胞内コレステロール濃度の低下によって、小胞体膜から遊離し、importin βに直接結合することによって核内に移行することを明らかにした。更にそれら複合体の構造解析によって、importin βが構造変換してSREBP-2と結合する機構を示した。また細胞への紫外線照射によってimportin αが単独で核内に移行して蓄積することを見出し、田中との共同研究によって解析を進めている。(米田)

  • 研究成果

    (6件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (6件)

  • [文献書誌] Uchikawa, M., Kondoh, H.et al.: "Functional analysis of chicken Sox2 enhancers highlights an array of diverse regulatory elements that are conserved in mammals."Dev.Cell. 4. 509-519 (2003)

  • [文献書誌] Yamamoto, M., Hamada, H.et al.: "Nodal signaling induces the midline barrier by activating Nodal expression in the lateral plate."Development. 130. 1795-1804 (2003)

  • [文献書誌] Groisman, J., Tanaka, K., Nakatani, Y.et al.: "The ubiquitin ligase activity in the DDB2 and CSA complexes is differentially regulated by the COP9 signalosome in response to DMA damage."Cell. 113. 357-367 (2003)

  • [文献書誌] Takayama, Y., Sugino, A., Araki, H.et al.: "GINS, a novel multiprotein complex required for chromosomal DNA replication in budding yeast."Genes Dev. 17. 1153-1165 (2003)

  • [文献書誌] Konishi, A., Yoneda, Y., Tsujimoto Y.et al.: "Involvement of histone H1.2 in apoptosis induced by DNA double-strand breaks."Cell. 114. 673-688 (2003)

  • [文献書誌] Lee, S.J., Tsukihara, T., Yoneda, Y.et al.: "The structure of importin-b bound to SREBP-2 : Insights into nuclear transport of a transcription factor."Science. 302. 1571-1575 (2003)

URL: 

公開日: 2005-04-18   更新日: 2016-04-21  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi