研究課題
課題1. フックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)に関する研究FECD患者から提供された角膜内皮細胞にSV40/hTERT遺伝子を導入して樹立した不死化角膜内皮細胞株(iFCED)を用いて、FECDのin vitroモデルとしての有用性を検討した。iFECDでは、1型コラーゲンやフィブロネクチンなどの異常な細胞外基質(ECM)産生が亢進していることを遺伝子およびタンパクレベルで確認し、FCED患者の臨床的特徴である角膜内皮基底膜肥厚とguttae形成に関与すると考えられるEMT関連マーカーの発現がiFECDにおいて亢進していることを示した。TGF-β経路の各種阻害剤、あるいはsiRNAによるEMT関連遺伝子のノックダウンによりiFECDにおけるECM産生を抑制することを示し、TGF-βシグナル制御による角膜内皮治療薬開発の可能性を示唆する結果が得られた。課題2. 角膜実質におけるケラタン硫酸糖鎖の合成とその生物学的機能に関する研究角膜実質の細胞外マトリックス構築に重要であると考えられるケラタン硫酸グリコサミノグリカン(KS-GAG)の生合成経路とその生物学的機能を解析する目的でKS-GAG合成に必須である酵素の遺伝子ノックアウトマウスを用いてKS-GAGの変化と角膜実質厚の変化を調べた。硫酸転移酵素遺伝子Chst5のノックアウトマウスは高硫酸化KS-GAGが消失して鎖長が短くなり、また角膜実質厚も薄くなっていたことからChst5の正常な発現はKS-GAGの伸長に必須であり、正常な角膜厚の維持に必要であることが分かった。一方で別の硫酸転移酵素遺伝子Chst1のノックアウトマウスでは高硫酸化KS-GAGは消失していたものの鎖長に変化はなく、角膜実質厚にも変化は見られなかった。Chst1とChst5のダブルノックアウトマウスの角膜はChst5ノックアウトマウスの角膜とほぼ同じであったことから、Chst1の発現の有無はKS-GAGの伸長には影響を与えないことが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の成果により2件の特許出願(外国)を行ったことから、当初の計画以上に進展していると考える。
本研究成果を元に、今後はフックス角膜内皮ジストロフィに対する薬物治療法の開発のための研究を進める。
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