研究課題
平成25年度は、研究初年度における研究対象トピックの選定、必要資料の収集等の準備を踏まえ、研究代表者・分担者個々の研究対象について具体的検討に着手するとともに、様々な学会・研究会を活用し、他の研究者・実務家との意見交換を行った。中野は、主権免除原則の適用と外国判決の承認・執行に関する最近のEU裁判所の判決、および仲裁手続と訴訟手続の競合規整問題に関するWest Tankers事件英国判決を検討するとともに、2012年末に成立した国際裁判管轄・外国判決承認・執行に関する欧州規則(ブリュッセルI規則)の改正案の準備過程における議論を精査し、それぞれについて論文を公表した。また、王は、関西国際私法研究会、国際民事執行・保全研究会、国際家族法判例研究会、民事訴訟法研究会等の研究集会に積極的に参加し、広く日本の実務家・研究者との人的ネットワークの構築にあたる傍ら、台湾での原子力発電所の建設工事をめぐる国際仲裁事件で問題となった台湾仲裁法の手続的問題(執行手続と取消手続の連携不足、取消判決の既判力など)について手続法・実体法両面にわたる比較法的見地から検討し、国際商取引学会の年報において論文を公表した。さらに、中野・王は、ここ数年にわたる共同研究の成果をふまえ、外国に向けて成果を公表するという見地から、日本・台湾間での司法共助の実施可能性と外国判決の承認・執行について英語で共著論文を作成し、International Association of Procedural Lawの学会誌においてこれを公表した。これは、従来、日本・台湾間では国交の欠如から司法共助は不可能であり、従って両国間での外国判決の相互的承認・執行はできないとする一般的理解に対して、両国の通商代表機関を経由することにより、一定範囲で司法共助の実施を可能できることを実証的に示したものであり、日本だけでなく、米国や欧州ほか、台湾との交流がある全ての地域において新しい可能性を開きうる研究成果であると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
上記のように、本研究は、ほぼ当初の予定通りに成果をあげてきたと評価しうるが、王欽彦氏は、一身上の都合により、9月に日本での研究の続行を断念し、台湾に帰国することとなった。
上記のように、本研究は本年度9月をもって終了した。しかし、中野・王の研究上の協力関係は極めて良好であり、今後とも、台湾・日本で研究会を共同開催し、共同で論文を執筆するといった作業を継続してゆく予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 図書 (2件)
International Journal of Procedural Law
巻: Vol.3 Nr.1 ページ: 80-103
国際商取引学会年報
巻: 15 ページ: 66-77
靜宜法律
巻: 2 ページ: 23-64