研究課題/領域番号 |
12F02016
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
正高 信男 京都大学, 霊長類研究所, 教授
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研究分担者 |
BOUCHET Helene 京都大学, 霊長類研究所, 外国人特別研究員
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キーワード | ニホンザル / 発情 / コミュニケーション / 異種間 |
研究概要 |
鹿児島県屋久島の野生ニホンザル群を対象に野外調査をおこなった。各種社会行動のデータには、随時ビデオカメラを利用し、詳細な行動の記録をした。本研究は、音声コミュニケーションを焦点に充てる研究でもあるので、行動記録とへ異国して、高音質な録音収集をした。音声の変化とメスのホルモン周期との関連性を調べるために、糞尿の非侵襲サンプルの収集をした。採集したサンプルは、個体の名前状態などをラベルの上、京都大学野生生物研究センター屋久島野外観察ステーション随時保存し、分析に備えた。 年度末の調査終了後に、ホルモンアッセイを実施する予定であったが、今年度は野外調査に大きな時間を割いたのと、そのほかの行動分析に時間をあてたため、岡山理科大学の共同研究者とともに行う予定だったホルモンアッセイは次年度に持ち越した。現在までの分析は行動のみであるが、行動分析の結果は、ニホンザルのメスの発情は、屋久島ではサイクルが複数回訪れ、長く、受精妊娠後であるにもかかわらず、発情する行動がみられた。つまり、擬似的な発情行動が認められ、メスの交尾期における発情としての変化は、ホルモンの影響と言うより、むしろ社会関係によって影響を強く受けることを示唆するデータが得られた。ニホンザルのメスは、発情すると音声が変化することが知られているが、音声の変化についても同様の傾向が認められた。社会による発情行動の発現は、おそらくメスのオスを選ぶための繁殖戦略と結びついていると考えれる。次年度以降に、収集したサンプルより性周期を分析し、発情行動の発現に与える、ホルモンと社会関係の影響について議論し論文としてまとめる準備を行う。 また、別のテーマとして設定した、サル-シカ間の異種間コミュニケーションに関する研究についても、野外実験に備えての刺激準備、実験準備を行い、次回春季以降に実施できる目処がついた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野外調査で予想外の出来事もあり、思うように進まない点もあるが(発情メスの調査がとても難しいなど)、新しいテーマにも果敢に挑戦しており、成果としては十分に望めることから、おおむね順調に進呈していると考えて良い。
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今後の研究の推進方策 |
ホルモンアッセイに先立ち、先に得られた行動データを一刻も早く分析し、次年度の交尾期に必要なことと不必要なことを洗い出す必要がある。また、別テーマのサルーシカの異種間コミュニケーションについては、交尾期の調査に支障なく完遂することを目指し、非交尾期である春から夏にかけて十分に集中的に実験実施する必要がある。
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