研究課題/領域番号 |
12F02016
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
正高 信男 京都大学, 霊長類研究所, 教授
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研究分担者 |
BOUCHET Helene 京都大学, 霊長類研究所, 外国人特別研究員
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キーワード | ニホンザル / 音声コミュニケーション / 学習 / 異種間コミュニケーション |
研究概要 |
本プロジェクトで今年度については、大きく3つのことをターゲットに定めた。1)野生ニホンザルのメスが、発情期に発する音声(発情音)についての、内分泌行動学的な研究の継続(2010年来のもの)、2)同所的に生息するヤクシマザルとヤクニホンザルの異種間コミュニケーションの研究、3)ニホンザルの音声コミュニケーションの「会話規則」に関する実験的研究(共同研究)、である。1)の研究では、発情した発声する、「発情音声」の機能とその認知について明らかにすることを目的とした。そのために、音声録音、状況分析、ホルモン計測を同時的に実施した。鹿児島県屋久島の野生群を対象に、複数のオトナメスを対象個体として、野外観察を行った。これまでに5頭からデータを得ることができた。ホルモンアッセイの結果は今のところうまくいっていない。しかし正確な受精日を推定しながら、状況を分析し、発情メスが発情音声を発する背景にある、社会的要因と環境要因の関連性を調べるべく分析を進めている。2)の目的は、同所的に生息するニホンザルとニホンシカの異種間コミュニケーション成立の可能性について検討することである。そこで、採食戦略の場面で1)シカがサルの音声を一方的に利用しているか、対捕食者戦略の場面で2)シカがサルの捕食者に対する警戒音声について理解しているか、どうか検討をするため、両種の音声を収集している。またそれに基づき、プレイバック実験を予備的に進めプロトコールを確立した。3)は、サブテーマとして実施した共同研究である。ニホンザルの音声交換時における会話ルールについての認知に関する研究である。会話規則の認知は後天的に起こり、学習の効果を確認した。本結果は夏の国際学会において発表し、現在論文として取りまとめている最中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フィールドワークにうまくいかない点も出始めたため、いくつかのプロジェクトが遅れている。その反面、1報分に相当する論文データは得られ、学会発表として発表したので、最低限のノルマは果たしていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
残りの採用期間も短いために、プレイバック実験による検証は素早く実施して終わらせる必要がある。これまでに得られたデータも、できる限り再吟味の上、論文としてまとめるように働きかけ論文成果を取りまとめる努力を続ける。
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