研究概要 |
究極的な物理的現実の記述は量子論的でなければならないが,われわれが了解可能な情報,即ち,測定の結果は完全に古典的である.従って,通信の物理的過程は,装置の内容が物理的に特徴付けられていないが,量子論によって設けられる一般的制約条件を満たすという仮定のみに基づくブラックボックスに対する入出力相関関係によって記述可能である.本研究課題では,informational powerの概念を無限次元量子測定において研究し,量子論によって許される入出力相関関係の集合を古典的な理論で許される組との比較の上で特徴づける問題に対処するための理論的な道具を導いた.この一般的成果を,装置から独立なdimension witness,装置から半独立な量子プロトコル,量子情報路を通した古典通信などの量子論におけるいくつかの関連した未解決問題に応用して,検出ループホールに対してロバストなdimension witness,暗号プロトコル,乱数発生プロトコル,、限られた資源の下での量子情報路を通した古典的通信に対する最適なプロトコル,最適な量子読み取りプロトコルを導いた.これらの成果は,量子通信理論,量子理論,量子論の基礎,情報理論のようないくつかの分野に研究上の波及効果を与え,更に,それらは現在のテクノロジーで実験的実現に適したものである.このような理由から,将来,異なる分野にまたがってインパクトを与えることが期待される.
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今後の研究の推進方策 |
量子論では,量子縺れのような空間的相関に関しては,直接検出が許されているが,時間的相関,すなわち,同一地点の異なる時刻における事象の統計的相関に関しては,実験で直接検出することができない.本研究課題において考察された理論的枠組みは,自然に時間的相関の研究に拡張することが可能であり,時間的相関を最適に模倣する問題に応用可能であると考えられる.よって,それらの問題に強力な理論的戦略と間接的に接近する実験プロトコルをもたらし,実験的に不確定性と測定・擾乱関係を確かめる新しい方法を提供することが期待できる.
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