Chang氏は、着任後、強相関系物質等における多重極限環境(高圧・低温・高磁場)下での基礎物性研究行うための、予備実験を開始し、装置稼働のための技術習得を行った。具体的には、研究室に設置されている。 キュービックアンビル圧力装置およびピストンシリンダー型圧力発生装置を用い、電気抵抗、ac磁化およびac比熱の測定方について習得した。また、圧力範囲を広げるため、新しいアンビルを用いた装置開発も平行して行った。 まず、高圧合成で作成されたPbCrO3多結晶試料の電気抵抗温度依存の測定を各圧力下で行った。常圧下では、電気的には半導体(絶縁体)的振る舞いを示すと共にTN鯉245K以下で反強磁性体にオーダーしさらに、低温の185Kおよび62Kで磁気構造の再配列が起こる物質として報告されている。また、高圧下x線測定により、PV~1.6GPa付近で結晶構造を変えずに体積が減少する一次相転移が存在するとして伝導、磁性、構造の点から興味を持たれている物質である。この物質の高圧下での物性を明らかにする目的で高圧下での電気抵抗の温度依存性の測定を行った。その結果、電気抵抗の温度依存性は、PVの前後の圧力でその値が全温度範囲で急激に小さくなった。しかしながら、半導体的振る舞いは、8GPaという高圧下においても観測された。電気抵抗測定からは、磁気秩序の圧力依存性があまりはっきりしなかったので、磁気的な振る舞いが高圧下でどの様に変化するかを明らかにする必要がある。現在、結果を論文にまとめている最中である。
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