研究概要 |
前年度の研究で、Makbal Complex産のタルク・ザクロ石・クロリトイド片岩中の緑簾石+石英±藍晶石±Na雲母から成る多相固体包有物(MSI)の主要元素組成を復元し、これらMSIは母岩が超高圧変成作用を被った地下100km前後の深度ではローソン石であったが、母岩が地下60km程度まで上昇・減圧した際にローソン石がMSIに分解し、相当量の流体が上昇する超高圧変成岩から放出されたとの考えを提示した。今年度はLA-ICP-MS分析で取得した緑簾石の微量成分組成を文献データと比較検討し、斜長石から緑簾石に変成した場合と、ローソン石から緑簾石に変化した場合において、緑簾石の微量成分組成に違いがある事を見出した。これらの成果は2013年9月の国際エクロジャイト会議(イタリア)で講演するとともに、Lithos誌に投稿した。 Aktyuz Complex産エクロジャイトのザクロ石に包有されている十字石+Naに富む雲母+ヘマタイトから成るMSIの微量成分をLA-ICP-MSで分析した。その結果、MSI中には液相濃集元素であるCs, Rb, Ba, Pb, Li, Srとlight REEに富んでいることが判った。また、十字石はLi, CsとRbの, Naに富む雲母はBaとSrの主要貯蔵槽である事もわかった。これらのデータと母岩の形成条件から、上記のMSIは変成作用ピーク時に活動していた流体に由来するものと結論した。この成果は2013年5月の地球惑星科学連合大会(幕張)と上記の国際エクロジャイト会議で講演するとともに、現在、投稿論文を執筆中である。 Makbal Complexの高変成度部と低変成度部の岩石に対し白雲母のK-Ar年代測定を実施した結果、400-415Maの値を得た。この値は先行研究での高変成度部の報告値(480Ma)とは有意に異なっており、現在その原因を解明中である。
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