研究課題/領域番号 |
12F02028
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
高玉 博朗 中部大学, 生命健康科学部, 准教授
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研究分担者 |
KHANNA Rohit 中部大学, 生命健康科学部, 外国人特別研究員
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キーワード | 人工関節 / チタン / コールドスプレー / 表面処理 / アルミニウム / アルミナ / 酸化 |
研究概要 |
本研究では、骨結合能を付与可能なチタン合金上にアルミナやDLC(ダイヤモンドライクカーボン)などの硬質層を形成させることにより、優れた骨結合性、耐摩耗性、破壊靭性を併せ示す新規の人工関節用部材の作製指針を明らかにすることを目的とする。 今年度は、コールドスプレー法を用いてアルミニウム金属を積層後、それを酸化させて硬質層を形成させる独自の手法によりアルミナ層の形成を試みた。種々の条件(雰囲気:HeまたはN_2、圧力:1~3MPa)での積層を検討した結果、チタン合金表面に、厚さ約0.2μm~1mmの緻密なアルミニウム金属層を積層することに成功した。Heに比べN_2条件の方が、アルミニウム金属層と下地のチタン合金基板との境界面のクラックの形成を大幅に減少できることが分かった。続いてこれを種々の条件(雰囲気:Arまたは大気、温度=600~900℃)で加熱処理すると、Ar中での加熱処理では、主にTiAl_3からなる中間層を境界面に形成させて密着性を向上させることができた。大気中で加熱すると、中間層の形成に加えて、最表面に酸化物に富む層を形成できることが分かった。 一方、DLC層の形成に関しても、アンバランスドマグネトロンスパッタ法を用い、チタン合金表面に緻密なDLC層を積層することに成功した。下地の粗さの影響について検討した結果、DLC積層前後で粗さにほとんど差が見られないことが分かった。 以上のことから、本研究で提案した手法により、チタン合金表面に硬質層を形成させることができた。従って、本手法が、優れた骨結合性、耐摩耗性、破壊靭性を併せ示す新規の人工関節用部材を作製するための新たな手法として有効であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに成果を挙げており,おおむね順調に進展している。コールドスプレー法を用い、形成条件を検討することにより、人工関節用チタン合金表面に、厚さ10μm以上で、緻密で界面でのクラックの少ないアルミニウム金属層を積層することに成功した。それを種々の条件で加熱処理することにより、中間層を形成させて密着性を向上させ、同時に酸化物に富む層の形成に成功した。DLC層の形成に関しても、マグネトロンスパッタ法を用い、チタン合金表面への緻密なDLC層の積層に成功し、下地の粗さの影響を明らかにした。得られた試料表面の表面構造変化などを評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果により、厚いアルミニウム金属層を形成できることは明らかにしたので、今後は、厚くて緻密なアルミナなどの酸化物層を形成するために、加熱処理条件の検討に加え、マイクロアーク酸化などの新しい手法も検討する。最表面のアルミナ層と母材のチタン合金との間に傾斜構造を形成させることにより高い剥離強度を有するアルミナ層の形成を試みる。DLCに関しては、DLC層からチタン合金表面にかけて、傾斜的に組成を変化させた中間層を形成することにより、高い剥離強度を示すDLC成膜条件を検討する。得られた試料表面の表面構造変化、硬度、剥離強度、摩耗特性などを評価する。
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