研究課題/領域番号 |
12F02031
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
八木 政行 新潟大学, 自然科学系, 教授
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研究分担者 |
CHANDRA Debraj 新潟大学, 自然科学系, 外国人特別研究員
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キーワード | メソポーラス材料 / 水の酸化 / 光アノード / ナノ構造 |
研究概要 |
〈緒言〉 従来の化石燃料に代わるクリーンなエネルギー供給システムとして、人工光合成システムの構築に大きな関心が寄せられている。人工光合成システム構築において、可視光で駆動する高効率水系光酸素発生アノードの開発が重要である。酸化タングステン(WO_3)は水の酸化が熱力学的に可能な価電子帯エネルギー準位を有する安定な可視域半導体であるため、可視光水分解システムの光アノード材料として期待されている。^1本研究では、WO_3電極の光電気触媒活性の向上を目指して、両親媒性界面活性剤であるhexadecyl-2-pyridinylmethylamine (PAL2-16)を用いて新規かつ簡便な方法でメソポーラス構造を有する結晶性WO_3電極を作製した。本発表では結晶性メソポーラスWO_3電極の合成、キャラクタリゼーション、および光電気触媒活性について報告する。 〈結果と考察〉 TEM測定より、作製したWO_3/PAL2-16表面には直径約3nmの細孔が規則正しく形成されているのが確認された。窒素下で焼結(450℃または550℃)した後、酸素雰囲気下に変更して焼結を続けると、WO_3が結晶化するため規則的な構造がやや壊れる傾向を示すものの、メソポーラス構造が保持されることが分かった。空気下で作製したWO_3サンプルでは、メソポーラス構造が保持されなかったことより、窒素/酸素の雰囲気変更が重要であることが示された。窒素下で焼結することによりPAL2-16キレート剤が炭化され、これがメソポーラス構造の支柱となるため、結晶性メソポーラス構造が保持されたと考えられる。WO_3/PAL2-16電極を用いた光触媒反応では、バルクのWO_3電極と比較して、電荷量が6.6倍向上し、酸素発生量も12倍に向上した。このように、結晶性メソポーラスWO_3電極が高い光電気触媒活性を示すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
両親媒性界面活性剤を用いて、メソポーラス酸化タングステンの合成に成功した。従来の酸化タングステンに比べ、非常に高い光触媒活性を示すことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
メソポーラス材料の合成で一般に使用されるブロック共重合体の多くは、メソポーラス金属酸化物の結晶化が十分に進行する前にテンプレートが分解・除去されてしまうため、メソポーラス構造を保持するのは困難である。本研究では、芳香族有機化合物の高い熱安定性と窒素雰囲気下での焼結処理による炭化現象に着目して、親水性芳香族部位を有する新規な界面活性剤テンプレートを合成する。炭化したテンプレートを細孔の支持体としてメソポーラス構造を保持しつつ、金属酸化物を結晶化する条件を見出す。結晶性メソポーラス酸化タングステン電極を用いて、可視光による水からの高効率酸素発生を実現する。従来の手法で合成された酸化タングステンと比較することによりメソポーラス構造の有用性を実証すると共に、界面活性剤の構造およびその集合体形成条件により細孔構造を制御する。
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