研究課題/領域番号 |
12F02035
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
神戸 宣明 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授
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研究分担者 |
QIU Renhua 大阪大学, 大学院・工学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | クロスカップリング反応 / 含硫黄化合物 / 含セレン化合物 / 触媒反応 |
研究概要 |
1、目的・意義 機能性材料および生理活性物質の多くは、分子内に様々なヘテロ原子を有している。ヘテロ元素の中で、カルコゲン元素(酸素族)である硫黄やセレンは電導性材料やアミノ酸など多くの分子に含まれ、その効率的な導入手法の開発は重要な研究課題である。本研究では、入手容易な含カルコゲン原子化合物を用いて、カルコゲン-カルコゲン原子結合やカルコゲン-炭素結合を切断し、新規な炭素-カルコゲン原子結合を生成する新規触媒反応を開発すると共に、カルコゲン官能基導入反応として合成化学的応用面の開拓を行う。触媒として遷移金属触媒のみならず酸塩基対触媒や有機触媒の利用も併せて検討する。 2、研究内容 ジフェニルジスルフィド(PhSSPh)を硫黄官能基供給剤として利用する芳香環上へのアリールチオ基導入反応に、パラジウムが高い触媒能を有することを見いだした。これを応用して、炭素-水素結合を炭素-カルコゲン原子結合へと変換する新規触媒系を開発した。すなわち、パラジウム触媒と銅塩の存在下で、芳香族化合物(ArH)とジフェニルジスルフィドから高収率でチオエーテル(ArSPh)が得られた。この反応では、パラジウムによるジスルフィドの硫黄-硫黄結合の切断と、芳香環の炭素-水素結合の切断を経て、新たな炭素一硫黄結合が生成する。この触媒系は、同族のジセレニド化合物を用いる場合にも有効で有り、様々な含セレン化合物の合成に応用する事が出来る。 また、チオフェンおよびセレノフェンの様な含カルコゲン複素環を基質とする炭素一炭素結合形成反応にも取り組み、ロジウム触媒が有効であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、カルコゲン-カルコゲン結合を切断し、新たな炭素-カルコゲン結合の生成を効率的に進行させる触媒反応の開発に成功し、概ね順調に成果が得られつつある。しかし、現在のところ遷移金属触媒の利用が必須であり、酸塩基対触媒では効率よく反応が進行しない。今後、遷移金属触媒の知見を基に新規酸塩基対触媒の設計が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、硫黄およびセレン原子と窒素原子を含む化合物の効率的合成に成功している。得られる化合物群は、酸塩基対触媒の良い母骨格となり得ると考えており、これらの化合物を用いた新規触媒系の開発を行うことにより、ヘテロ原子化合物に対する選択的結合切断と結合組み換えを含む新規触媒反応の開発を行う。
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