研究課題/領域番号 |
12F02039
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
神戸 宣明 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授
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研究分担者 |
VUTUKURIPRAKASH Reddy 大阪大学, 大学院・工学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | クロスカップリング反応 / ヘテロ原子 / 触媒反応 / カルコゲン |
研究概要 |
1、目的・意義 炭素一炭素結合形成反応は、様々な有機化合物の基本骨格を構築する上で、必要不可欠な反応群である。遷移金属触媒を利用するクロスカップリング反応は、単結合を構築する手段として有機合成反応に既に広く活用されている。本研究では、N,S,Seなどの遷移金属に配意しやすいヘテロ原子を含む化合物を基質として選び、炭素一水素原子の切断を経て、新たな炭素一炭素結合を形成する新規な合成手法の開発を目指して研究を行った。 2、研究内容 配位性官能基を有する芳香族化合物とチオフェン誘導体を基質とし、そのクロスカップリング反応について種々検討を行った結果、ロジウム触媒に銀塩を添加し、銅塩を酸化剤として用いることにより、配位性官能基に隣接する炭素一水素結合と、チオフェンの2位の炭素-水素結合の切断を伴ったクロスカップリング反応が効率よく進行することを見出した。本反応では、これまで利用が困難であった無置換のチオフェンを用いても効率よく反応が進行し、同族のセレノフェンの利用も可能であった。本触媒系を利用することにより、機能性材料の母骨格として広く利用されているオリゴチオフェンの両末端に芳香環を導入することも出来る。さらに、得られた生成物が発光性分子としての性質を示すことも確認した。 また、この触媒系を活用することにより、含窒素化合物の炭素一水素結合の切断を伴う分子内での炭素一炭素結合生成を試みたところ、イミダゾール誘導体からベンゾイソキノリン類を合成する新しい環化反応を見出した。 上記の反応は、いずれも二つの炭素一水素結合を切断し、新たに炭素一炭素結合が生成する脱水素型の反応であり、脱離基の導入による事前の活性化を必要としない効率的な合成手法である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、遷移金属触媒と強く結合する窒素、硫黄、セレンを含む基質に対して有効な触媒系の開発に成功しており、概ね順調に進展していると考えている。より難易度の高い高周期典型元素を含む基質へと展開し、今回見出した触媒系の基質適用範囲の拡大が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
上記の如く、遷移金属触媒の触媒毒である硫黄およびセレンを有する基質に有効な触媒系を見出した。今後、より難易度の高いテルルなどの高周期典型元素を含む基質へと展開し、含高周期典型元素化合物の新規合成方法の開発を目指す。
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