研究概要 |
研究計画で述べたように,本実験的研究の目的は紫外光電子分光法とX線散乱法を利用して有機半導体ヘテロ界面の構造と電子状態の関係を研究することを主目的とした。本研究の初年度は,これらの実験法によって非常に精度のあるデータを測定することが出来,以下に示す3つの成果を得た。これらの内2つの成果は既に論文として発表した。また,3番目の成果は論文として発表する準備をしている。当初予定以上に新しい成果を得ており極めて順調に進展している。これらを踏まえ,第2年度は、これらの実験を異なるドナー/アクセプター系の組み合わせに対して行う予定である。 発表論文(本事業の研究によるもの) ・A. Hinderhofer, T. Hosokai, K. Yonezawa, A. Gerlach, K. Kato, K. Broch, C. Frank, J. Novak, S. Kera, N. Ueno, and F. Schreiber, Appl. Phys. Lett. 101, 033307 (2012) ・A. Hinderhofer, A. Gerlach, K. Broch, T. Hosokai, K. Yonezawa, K. Kato, S. Kera, N. Ueno, and E Schreiber, J. Phys Chem. C 117, 1053 (2013)
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今後の研究の推進方策 |
前年度は,UPS,MAESおよびX線回折によって,DIP/PFP,DIP/PENおよびPEP/PENのヘテロ有機-有機接合系の室温での成長を行い,分子配向と電子状態の測定を行った。特にイオン化エネルギー,仕事関数,ホール注入障壁などの準位接続に関する構造依存性についての知見を得た。本年度は,これらの研究を発展させるため二層構造膜について,下層の膜構造の上層膜の構造・電予状態への影響とエネルギー準位接続への効果を詳細に研究する。具体的には以下の研究を実施する:(1)初めにDIP/PFP,DIP/C60,DIP/PENおよびPEP/PENのヘテロ有機・有機接合系の室温での成長を行い,分子配向と電子状態の測定を行う。基板として,SiO_2/Si(100),ITO等デバイスで利用されている基板と不活性なグラファイト(HOPG)を用いる。(2)上記のヘテロ構造について,低温(150K)の基板上への膜成長によってアモルファス構造を準備しその確認と電子状態測定を行う。特にイオン化エネルギー,仕事関数,ホール注入障壁などの準位接続に関する構造依存性についての知見を得る。(3)下層と上層膜の構造が異なるヘテロ構造を作製する。即ち,低温基板上への下層成長および室温での上層成長における電子状態測定を行い,下層構造の変化による上層の電子状態への影響とエネルギー準位接続への効果を研究する。 (4)上記各種ヘテロ構造に対する結果を解析する。必要に応じて,バンドギャップ状態の電子密度の測定を超高感度UPS装置を利用して測定する。以上から当初目的を達成する。
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